「腋から乳首の上までのライン」がスペンス乳腺スポット=Bスポットとして注目を集めています。

 

 

 

術後の感想-179に登場する沙夢さんは、乳首愛撫が大好き女性。その沙夢さんが「きのうはスペンス乳腺マッサージの動画をおかずにオナニーしました」と教えてくれたのですが、え、なになに、その変な名前のマッサージは?

なんか、そんなの最近はやってるの?と家に戻ってネットサーチしてみたら・・お、あるある。たくさんひっかっかてきます。

 

 

OPPAIってのは、オッパイフェチをターゲットとしたAV会社ですが、そこが2016年の1月に出した 『スペンス乳腺開発クリニック』がブームの火付け役でしょうか?この作品はその後、シリーズ化されていますし、他のAV会社からも『スペンス乳腺』をキーワードとしたオッパイものAVがたくさん出ています。

去年ぐらいから、ちょっとしたスペンス乳腺ブームなのですね。なんせ バストのGスポットと呼ばれる『スペンス乳腺』を攻めると、「女性は潮を吹きまくり、火照るマンコを鎮めるために、男のチンポを生挿入、生出しまで求めちゃう」そうですから、世のスケベ男は、注目せざるを得ないですね。

この手のエロキャッチを創り出すのって、エロ業界の得意技。面白いです。

「ポルチオ性感」とか日本特有の性感の考え方ですが、これも『ポルチオの真実』で紹介したように、おそらくブームの火付け役はAVメーカーです(ポルチオという言葉の使用そのものは『元祖ポルチオ性感』にあるように、戦後すぐにまで遡ることができます)。

ネットサーチを続けると、2016年より以前のブログにも、いくつか既に『スペンス乳腺』をキーワードとしたオッパイ愛撫法の記事が見つかります。

どこまで遡れるのかわかりませんが、例えば「俊平の雑学研究所」というブログの2013年11月12日付の記事には『スペンスの乳腺尾部を攻めろ!』と題して、女性が感じる乳房の性感スポットが詳しく紹介されており、そこには、乳房の中で乳首は別格として、その他の性感スポットは「アンダーバスト」と「スペンスの乳腺尾部」である、と明記されています。

また、2016年の「エッチライフ」というブログの記事「Bスポット(スペンスの乳腺尾部)の開発と愛撫方法まとめ」ではBスポット(breast spot)という名前を「スペンスの乳腺尾部」の別名にしようという提案がされています。

スペンスの乳腺尾部」や、上のAV作品の解説に出てくる「乳腺堤」など、解剖学・発生生物学の専門用語が登場するのですが、オッパイの性感スポットって、そんなによく分かっているんでしょうか?Gスポットでさえ、「ある」か「ない」かで喧喧囂囂(けんけんごうごう)の議論が続いている(例えば『Gスポット大戦』をご覧下さい)性科学の世界ですから、「オッパイのGスポット」なんて、さらに怪しいです。でも、よい機会ですので、オッパイのことをちょっと勉強してみましょう。

 

 

 

オッパイの構造を復習(あるいは新たに勉強)しましょう。

外から見たオッパイは、胸の膨らみと、その先の乳首がありますよね。

乳首乳頭乳輪にさらに分けることができます。

乳頭の先には、目には見えないほどの穴がいっぱいあり、そこからお乳が出てきます。母乳プレイとかすれば、お乳が何本もあちこちに向かって噴き出すのが見えると思いますが、それぞれの出口から噴き出すお乳です。

乳輪には小さな突起物がいくつかついてますよね。小さな乳頭みたいですが、これはモントゴメリー結節と呼ばれるものです。ここも実はお汁の出口で、ここからは乳首に潤いを与えるオイリーな体液が出るそうです。授乳時には、赤ちゃんが嗅ぎ取るこのできる匂いのシグナルも、このモントゴメリー結節から出るとされます。

外から見たオッパイの構造はこんなところでしょう。

オッパイの形や、固さ、弾力性は実に多様なのは説明は必要ないですよね。加えて、乳首や乳輪の色や大きさも、実に多様です。楽しくなっちゃいます。

男性の側から考えても、どんな乳房や乳首の形が好まれるかは実に多様です。巨乳が好きな男性もいれば、微乳が好きな男性もいます。乳輪が大きいのが美しいと思う男性もいれば、大きいのはダメだという男性もいます。乳首が黒い方が興奮する男性もいれば、ピンク色の方が好きだという男性もいます。ほんと、いろいろです。

面白いのは、一人の女性でも、乳房の大きさや弾力性は、性周期によって随分と変わること。女性にとっては当たり前のことなのでしょうが、男性側も、女性の乳房の感覚が性周期によって変わることを頭に入れておく必要があります。「この前は、気持ちいいって言ってた触り方なのに、今日は痛いって言うんだ。いいかげんだな!」ってのは、男性側の理解がいいかげんなんです。

乳頭乳輪も形が変わるのが楽しいですね。寒くなったり、興奮すると乳頭は勃起します。これは乳頭の中に、平滑筋と呼ばれる筋肉細胞が縦横に走っており、この筋肉の働きによるものです。クリトリスやチンポが勃起するのは、筋肉の働きではなく、海綿体への血液の流入によるので、同じ勃起でも機構が違うんです(『鳥は菱形の庭に降りる・・』などを復習してください)。

乳首の筋肉。青色は乳首を輪っか状に囲む筋肉。オレンジは縦に走る筋肉。文献1より。

 

さてオッパイの中はどうなってるんでしょうね。脂肪がつまってるんだって?そうですよね。脂肪が一杯です。

オッパイが脂肪で膨らむってのは、人間の特徴らしいですね。猿とかオッパイ大きくないでしょ。

ホルスタインとか巨乳でしょ、と思われるかもしれませんが、牛のあのでっかい乳は、脂肪がつまっているんではなく、牛乳が詰まっているそうです。

なんで、人間だけ、脂肪で胸を膨らますのかは、よく理由はわからないみたいですね。

まあ、それはさておき、オッパイのなかの構造は縦切りにするとこうなります。

左側が胸です。肋骨の輪切りが書いてますよね。その上に胸筋といって胸の筋肉があり、それを囲むように筋膜が存在します。筋膜については『AからH、GからHへ』でも紹介したように、サロンさんは大変興味をもっております。

この胸の上に乗っているように存在するのが乳房。黄色の部分は脂肪組織です。

赤色のつぶつぶで書いているのが乳腺と呼ばれる単位でお乳を作る装置です。

「腺」ってのは、基本的に「お汁」を作る装置で、いろんなところに出てきます。口の中には大小様々な唾液腺が多数存在し、唾液を作っています。胃や腸や膵臓もいろいろな腺をたくさんもっています。汗なんかも皮膚にある汗腺から出てます。エッチ関係では『スキーン!』で出てきたスキーン腺、『おつゆ』で出てきたバルトリン腺なんかがそうですし、上で出てきた乳輪のぶつぶつモントゴメリー結節も、モントゴメリー腺の出口なんです。

で、乳房は、お乳を作る乳腺の大工場みたいな感じで複雑に枝分かれした管と袋のような構造が多数(15〜20個)集まり、その管の出口が乳頭の先に集まっているわけです。

樹木の枝のような乳腺のかたち。

とういうことで、オッパイの中はこの乳腺と脂肪組織が詰まっているのですが、それらのすき間を埋めるような形で間質結合組織が詰まっているのですが、これが部分的に密になりコラーゲンに富む靱帯を形成しています。このスジみたいなのを「クーパー靭帯」と呼びます。

オッパイの形を支えるクーパー靱帯。

この「クーパー靭帯」っての、ブラジャーの宣伝なんかでしばしば登場するのでないでしょうか。靱帯ですので、コラーゲンなどのタンパク質でできた繊維。なので、伸びたり切断したりすると、基本的に修復できないと考えられています(細胞なら修復の可能性があるのですが)。オッパイの構造を支える針金みたいなものですから、ゆっさゆっさゆらしてたりすると切れて、形が崩れるので、ちゃんとブラジャーしましょうというのが、ブラジャー会社の論理です。多分正しいのでしょう。

その他にも、お乳の水分は、血液の血漿由来ですので、乳房にはたくさんの血管が通っています。これは、上の図には省略されています。また、老廃物を捨てる管のリンパ管も。これも省略されています。

もうひと大切なのが、神経ですね。

乳首にたくさんの感覚神経が集中しているのは、触ってみれば分かりますよね。クリトリス次いで、感じるところかもしれません。

脊椎から伸び、脇腹を通って脊椎に攻め入る神経。文献2より。

 

乳房に入る神経は主に脊椎の胸椎4番(T4)というところから脇腹を回って、体の前面、乳首へと(一部乳房の奥を通り乳首を通り越したところで表に出てきて、反対側から乳首に攻め入る)集まっているようですが、同様に胸椎3番や5番からも乳首に入るそうです。面白いのが、個人差がかなりあるらしく、人によっては別の胸椎から神経が来ていたりするんですって。

タッチ』では触覚に関する神経のタイプの紹介をしましたが、乳首に関するこの手の研究はあまり進んでいないようですね。乳頭には振動を感じるパチニ小体は存在しないけれど、乳房の奥のほうにはあるので、なので、乳房を揺らすと気持ちいいんだ(文献3)なんてのも、ありますが、どれだけほんとかわかりません。

 

皮膚の下にある神経センサーの模式図。左上からマイスター小体、パチニ小体、ルフィニ終末、メルケル触盤、そして自由神経終末。『タッチ』を読んでね。

 

授乳時に赤ちゃんが乳首を咥えると、この神経から脳にシグナルが送られ、下垂体後葉から癒しホルモンとか呼ばれるオキシトシンが放出され、このホルモンが血液に乗って乳房に運ばれ、乳腺を刺激して、お乳が放出されるのです。

セックスの時、男性が乳首を咥えると、同じように癒しホルモンが出るのでしょうかね。

機能脳科学の面白い論文に、クリトリスと、膣と、子宮と、さらに乳首を刺激した時に、脳のどの部分が活性化されるでしょう?てのがあります。

 

オマンコ刺激でも乳首刺激でも、脳の同じところが活性化されるんですって。文献4より。

答えは、乳首を刺激しても、オマンコ刺激しても同じ所が活性化するんですって。ちなみに、手の指や足の指をこちょこちょしたら、別のところが活性化されるそうです。ちょっと面白いですね。

 

さて、退屈なお勉強が続いていますが、最後にもう1つ。

 『感度覚醒! ! 乳腺オイルマッサージ オッパイの隠れた性感帯を刺激して痙攣鬼イカせ 』の宣伝文句に出てくる「乳腺堤」。これって発生用語です。

哺乳動物がお腹の中で発生する胎児期、体を上下に走る細い糸のような隆起構造ができます。

この矢印の先の線みたいな隆起が乳腺堤。こえはウサギの胎児だけど、ヒトもにたようなもの。

 これを「乳腺堤」っていうんですが、これに沿って哺乳動物は乳ができるんです。人間は左右1対ですけど、他の動物はもっとたくさんあるでしょう(豚とか7対)。

実は人間も、最大9対ぐらいのオッパイをつくるような能力がこの「乳腺堤」に並んで存在するのですが、基本的に胸の1対以外は、胎児の間にしぼんでしまいます。

腋から股に走る乳腺堤

この「乳腺堤」、大人の体にマップすると、腋(わき)から始まり、鼠径部(股。オマンコの横)で終わるラインとなります。

しばしば、このラインに沿って、ホクロのような「副乳」が男女ともに存在することがあるのですが、これは発生途中で消えなかった乳腺なんです。また、女性の方は妊娠時に、それまで見えなかった「乳腺堤」上の小さな乳腺が膨らんで、外から見えるようになったり、違和感を感じたりもします。

 

さてさて、眠くなってきましたよね。ここから本題。

女性を狂わすオッパイのGスポット「スペンス乳腺」ってのは何なんでしょう?

いくつかのwebサイトで「スペンス乳腺」マッサージの仕方が書いていますが、それによると

「腋の下のほうからのリンパに沿った部分も強い快感を感じる箇所・・腋の下の少し下部のおっぱい外側との境目付近です・・これが”スペンスの乳腺尾部”と言われている部分です。」

てな感じです。

上の『オッパイにもGスポットがあった! 最新アクメテクあなたも試してみませんか?! スペンス乳腺激イカセでお漏らしガクブル腰砕け』も観てみましたが、マッサージの最初の方は、確かに腕を上げて、腋から乳首の上までのラインを、指先で押し込むようにマッサージしています(最後の方は、AV作品らしく、乳房ユサユサ、チンポ生入れ生出しのお決まりで終わりますが)。

なるほど、「腋から乳首の上までのライン」が乳房のGスポットなのですね。

ここって、実は、サロンさんが一目おいているアダム徳永さんが、ちゃんと乳房の愛撫ポイントとして昔から指摘している場所なんですよね。

「乳房には隠れた名店が存在し、それはわきの下と乳首を結ぶ5センチのライン」

てあちこちに書いています。

ここを指先でリズミカルに押し込むようにマッサージすることで、乳房の下の胸筋を刺激して、とても気持ち良くなると解説しています。

サロンさんが、乳首マッサージの際に、後頭後手縛りにして、このわきの下と乳首を結ぶラインを刺激したりするのですが、これはアダム徳永の真似。確かに効果があります。

この「わきの下と乳首を結ぶ5センチのライン」って、「乳腺堤」の始まりの部分と一致しますよね。

では、 「スペンス乳腺」、あるいは「スペンスの乳腺尾部」てのは何なのですか?

スペンスってのは、19世紀の外科医ジェームス・スペンスの名前で、乳腺外科の偉い先生みたいです。

乳腺の解剖学についての詳しい研究をしたらしく、その時に、乳腺が胸に円形に存在するのでなく、両脇の部分では、一部、「尾」のように伸びていることを見つけています。

スペンス尾部

この少し出っ張った乳腺部分を、スペンス医師に敬意を払って「スペンスの乳腺尾部」と、乳腺外科の分野では呼ぶようです。

 

まとめましょう。

  • アダム徳永を含めた複数のスケベ男の体験から、多くの女性(全てではないと思います)が「わきの下と乳首を結ぶのライン」の刺激に、強い性的興奮を感じることが分かっています。
  • なぜそうなのかは、いろいろ仮説は出てますが、ほんとのところは誰も分かりません。
  • アダム徳永は、押し込むように刺激すると効果があるので、乳房の奥の胸筋が鍵だと考えています。
  • 遅くとも2013年頃には、誰かが、この位置が「スペンスの乳腺尾部」と一致することから乳腺と関係づけて流行らせようとしています。
  • また、この位置は「乳腺堤」とも一致するので、これと関係づけて流行らせようとしている人もいるようです。
  • スペンスの乳腺尾部」=「スペンス乳腺」です。
  • スペンスの乳腺尾部」と「乳腺堤」は「位置的」には似ているので、別々の性感スポットがあるとも考える必要はないです。
  • 2016年から、「乳房のGスポット=スペンスの乳腺」というキャッチで、ちょっとしたAV的なブームが始まりました。
  • 乳房の下のラインも性感スポットかもしれませんが、これを「スペンスの乳腺尾部」「乳腺堤」に関連付けるのは無理があります。
  • スペンスの乳腺尾部」を「Bスポット」と呼ぼうとする提案があります。サロンさんは支持します。

てな感じでしょう。

事実としては、「わきの下と乳首を結ぶのライン」に性感帯があるのでしょうが、それがなぜ感じる場所になるのかは、誰も分からないと思います。この領域にはリンパ管、リンパ節も豊富なので、それが関係しているのかもしれません。押し込むようにリズミカルに刺激すると効果があるということは、乳房の「クーパー靭帯」を介して胸筋の筋膜が振動し、筋膜に存在するマイスナー小体パチニ小体が効いているのかもしれません。また、経穴の1つで乳腺の発達を促すとされる天溪がこの近くにあるのも気になります。

いろいろ想像できますが、ほんとのことは、わかりません。これは、Gスポットポルチオスポットでも同じ事です。

 

乳房の扱い方についてまとめましょう。『SM美容術入門07-乳首マッサージ 』やアダム徳永さんの教科書も参考にするとよいと思います。

  • 乳房を強く揉むのは問題外。
  • 乳首にすぐ吸いつくのは問題外。
  • 乳房の周りから乳首の中心に向かってソフトタッチするのが基本。
  • だけど、乳首は触ってはいけない。
  • 究極の乳首マッサージは乳首に触らないこと。
  • 「わきの下と乳首を結ぶのライン」は皮下脂肪を振動させるのではなく、手の重みを利用して指先を1センチ程「押し込み」、脂肪の下に振動を与えるような要領で。
  • 乳房のアンダーラインにも性感帯があるかも。
  • 性感帯は個人差が激しいので、全ての女性に当てはまるわけではないことに留意。

てな、ところでしょうかね。

A, T, G, C・・といろいろあります』に新たに「Bスポット」が加わりましたね。A,B,Cと続いたので、次はDスポットかな。

 

 

 (参考文献)

1.O'Connell, R.L. & Rusby, J.E. Anatomy relevant to conservative mastectomy. Gland Surg 4, 476-83 (2015).

2.Riccio, C.A., Zeiderman, M.R., Chowdhry, S., Brooks, R.M., Kelishadi, S.S., Tutela, J.P., Choo, J., Yonick, D.V. & Wilhelmi, B.J. Plastic Surgery of the Breast: Keeping the Nipple Sensitive. Eplasty 15, e28 (2015)

3.  Levin, R.J. The breast/nipple/areola complex and human sexuality. Sexual and Relationship Therapy 21, 237-249 (2006).

4.  Komisaruk, B.R., Wise, N., Frangos, E., Liu, W.C., Allen, K. & Brody, S. Women's clitoris, vagina, and cervix mapped on the sensory cortex: fMRI evidence. J Sex Med 8, 2822-30 (2011).

 

 

『ジスイズ・オルガズム美容術』