「秘画の毛は実部の毛よりも細く掘るべし」と北斎は自らの髭の毛を傍らの小刀で見事2つに切り分けし。
日本緊縛文化の「父」で、変態の教祖様でもある伊藤晴雨翁は、 「髪フェチ」としても有名。
たいそうな博学インテリでしたので、美術における髪の描写に関する歴史もいろいろ研究しています。
上のイントロ文は、変態の新約聖書ともいうべき「奇譚クラブ」の昭和31年6月号に寄稿した伊藤晴雨『結髪の種々相』というエッセイ。
画神、北斎がいかに秘画(江戸時代のポルノ雑誌のこと)の毛(陰毛でしょうね)の描写にこだわったかの逸話を紹介しています。
浮世絵ってのは「絵師」「彫り師」「摺(すり)師」の分業体制で制作するわけですが、絵師である北斎の原画の女性の髪(毛)の美しさを、どうしても彫り師が北斎の希望通りに彫ることができません。
度重なるダメ出しに頭にきた彫り師が、「今日、ダメ出しをくらったら、彫刀でこのくそジジイを刺し殺ししまおう」と決心して作品を持参したころ、
やはり、一瞥してポット摺り板を放り捨てた北斎が、自らの毛(髭でしょう。チン毛だったかも)を自らの彫刻刀で、スッと二本に切り分け、上のセリフを吐いたというわけ。
その鮮やかな刀さばきを目にした彫り師が、心を入れかえ、一皮剥けた作品ができましたという、逸話の紹介部分です。
まあ、この手のお話しは作り話なのでしょうが、日本画家でもある伊藤晴雨が、生き様がやや似ている北斎に特別な感情を持っていたのは当然と言えば当然でしょう。
髪フェチの晴雨翁にとって、過去の天才画家達が、いろいろと女性の髪の美しさを描くことに工夫を重ねていたことを知るのは、とても嬉しいことです。
ちなみに、われらが変態教祖、伊藤晴雨翁は、昭和3年に「日本最初の緊縛写真集」も発行しており、そこでも髪フェチの面目躍如の作品を見ることができます。
おそらく、髪フェチってのは、SM変態に特有のフェチという分けではなく、広く男性(女性もいるのでしょうが)の中に、ある割合で存在する性愛嗜好なのでしょう。
下は、有名なタルコフスキーの「鏡」の一場面。「水フェチ」「髪フェチ」の両方が表現されています。
サロンさんも、小学生の頃に好きだった有子ちゃんの、三つ編みオサゲをグイグイと引っ張っては性的コーフンを覚えていました。いまだに、長い髪、ショートカット、黒髪、カラリングした髪、ストレートの髪、クルクルパーマの髪、とあれもこれも全部好きで、想像すると、頭がクラクラしてくるので、やはり「髪フェチ」なのかもしれません。
ところで、髪の毛って、何のためにあるのでしょうね?
髪の毛に限らずとも、腋毛や陰毛も含めてもいいです。
「頭を衝撃から守るため」「頭を紫外線から守るため」「皮膚の毒素を出すため」などなど、いろいろ説があります。陰毛の役割とかは、オマンコから出るフェロモンを纏わりつけておくためにあるんだとか・・・ほんとうなんですかね。いや、本当のことは誰もわかないんです。
腋毛を剃ったりパイパンしたり、あるいは全身脱毛したりしても、特に不便はなく、逆にスッキリ気持ち良いぐらいですから、毛ってのは、今の人間にとってはなくてもいいものなんでしょうね。でも、なぜか残っている。
しかも、「腋毛フェチ」もいれば、「陰毛マニア」もいて、「パイパンフェチ」もいて・・・さらに女性には「剛毛の男性が好き!」という人もいれば、「モジャモジャ、キモイ!」という女性もいて、「毛」と「好み」ってのは、とても複雑です。
「毛」と聞くと「髪の毛」「陰毛」それに「腋毛(わきげ)」「髭(ひげ)」などをまず思い出しますが、その他、体の大部分には細い「体毛(うぶ毛)」がはえていますよね。
『ヴィラ下水翼』 にも少し書きましたが、皮膚は「有毛皮膚」と「無毛皮膚」に分けることがき、基本的には毛のある「有毛皮膚」。毛のない無毛皮膚は、手のひらや、足の裏など、ごく一部。
髪の毛で10万本ぐらい、その他の部分も数えると百数十万本とかになるそうです。
髪の毛は周期的に、抜け落ちて、生え代わるのですが、その順番待ちの、体の外にまだ出ていない毛の子供みたいのを入れると数百万本あるそうです。
毛を作る器官を「毛包」「毛のう」とか呼ぶのですが、実に複雑な器官。
いろんな細胞が集まり、「毛包」の底の方から、ニョキニョキと髪の毛を生やしていきます。
髪の毛そのものは三層構造になっているそうで、一番外が「キューティクル層」、その内側が「皮質」で、髪の毛の色とかがここで決まります。
真ん中の芯のようなところが「髄質」で、細い毛とかは髄質がないそうです。
頭の髪の毛をそっと触れてみると、なんだか髪の毛そのものに神経が通っていて、髪の毛の表面に触れた手の感触を感じているように思いますよね。
でも、髪の毛には神経なんて取っていません。
というか、そもそも髪の毛は、細胞の死骸。
皮膚とか、爪もそうなんですが、細胞が「角化」といって、ケラチンというタンパク質を細胞の中にいっぱいためて、細胞としては死んでしまうのですが、生きた細胞みたいにフワフワでなくて、硬くてしっかりした残骸になります。それが、毛、皮膚、爪。
細胞の死骸とかいってしまうと、ネアティヴィに響いてよくないので、特殊な才能を発揮するために、極度に大変身してくれた細胞、って感じでしょうか。細胞の面影もあまりなく、もちろん分裂もしません。
ですので、毛そのものに神経は通っていません。
すると、どこで感じているのかというと、さきほどの毛包の部分。
髪の毛を作る皮膚の中の工場の部分に感覚神経があり、そこで毛の動きを感じます。
ついでに言うと、この毛包には、1つ1つに筋肉まで備わっているのですよ。怒り心頭で髪の毛を差が立てたり、「身の毛がよだつ」ときに活躍するのです。
『タッチ』などでも紹介してきたように、「五感」の1つの「触覚」は皮膚が主役。全身の皮膚が感覚器です。
マイスナー小体、ルフィニ終末、パチニ小体、クラウゼ小体、メルケル触盤、自由神経終末などに加えて、毛包に存在する感覚神経の『毛包受容器』も「触覚」で大きな役割を持ちます。
「有毛皮膚」と「無毛皮膚」の違いのところで過去にも何度か説明しましたが、「有毛皮膚」はどちらかというと受け身の感覚。つまり、誰かに触れらる時に感じやすいと言われています。
逆に、指先などの「無毛皮膚」は、どちらかというと「責め」の感覚。指先で相手を触りながら、感触を得ます。「受け身」の感覚に毛が関係しているのでしょうかね?
さて、最初の話に戻って、髪フェチ。
変態元祖、伊藤晴雨も髪フェチでしたが、もちろん三大縄神様もみな髪フェチ。
というか、髪の毛が女性の性感帯であること、つまり責めポイントであることをよく知っています。
サロンさんの少ない経験から言っても、髪責めで逝ってしまう女性が、結構いるのです。
「髪の毛、いじったぐらいで逝くはずないでしょう」とか思われるかもしれませんが、女性の性感は奥が深いのです。
ふたたび話が脱線しますが、エロ催眠術師REDと、AV男優の森林原人に、波多野結衣という豪華顔合わせの『昏睡キメセク ~媚薬×催眠×泥酔~ 波多野結衣』ってAVがあるのですが
冒頭のRED氏の催眠誘導で、どこが性感帯?って聞かれて、「髪の毛です」と答えた波多野結衣。
じゃ、髪の毛で逝ってもらいましょう、と森林原人を呼び出し、巧みに髪の毛を愛撫されて、激しく逝ってしまっています(この森林原人の髪の愛撫の方法は変わっていて、一見の価値ありです)。
「AVだから演出だよ!」と思われるかもしれませんが、凄腕のエロ催眠術師REDに加えて、これまた代々木忠から催眠セックスの手ほどきを受けている森林原人が加われば、ちょちょいのちょい、で髪逝きぐらいできてしまいます。
話がそれましたが、三大縄神様。
それぞれの味を出しながらの髪責めを披露してくれています。
耽美派の濡木痴夢男は髪の毛の美しさを引き出しながらの緊縛美。
責め縄の明智伝鬼は、責めの一手段として、髪責めを使います。
濡木と同じく耽美派の雪村春樹の髪責めは超一級。いくつかの名作を残していますが、縄を使わないで、手だけで髪責めをすることが多いのが特徴です。
その他、ほとんど全ての緊縛師は、髪責めを重視しており、髪の縛り方や、責め方のハウツーを教示しているひともいます。
例えば、有末剛のハウツーDVD『緊縛の心と技2』や、堂山鉄心のブログで紹介している『超簡単!髪縛り』などです。
アマチュア緊縛師のSiva氏が、かつてYouTubeに髪縛りの動画をアップしていたのですが、今はないようで残念です。いくつかの縛り方を開発している、髪縛りの達人の方のようです。
また、縄で髪を縛らずとも、髪責めは十分できます。縄を使わない責め方のハウツー教材は、例えば麻来雅人『縛り方講座入門編』や雪村春樹の弟子でもある荊子氏がいくつかYouTubeに、何本か髪責めのハウツー動画をアップしているので、参考になります。
さて、やや上級編ではありますが、『SM美容術入門30-基本4縛り』はまずまず使えるようになってきたら、髪責めにも挑戦してみてはいかがでしょう?
いくつかのポイントを書いておきましょう。
【Take-home message-67】髪の毛は絶対触って欲しくない女性もいることに留意。
髪をナデナデなら、それほど嫌悪感を抱く女性は少ないかと思いますが、引っ張るとなると、多くの女性は不快になります。この不快感を快感に変えるところが腕の見せ所。
間違えても「どんな女性でも、髪を引っ張りさえすれば髪逝きできるだろう」なんて思ってはいけません。なかには、ちょっと引っ張られただけで、ブチッと切れて、はい終わり、ってこともあります。
【Take-home message-68】髪を束ねて根本から、じわっと頭の上にゆっくり引く。
髪責めの基本は(1)髪の毛をなるべく多く束ねる、(2)なるべく根本(頭皮近く)で束ねる、(3)引く方向は頭の真上の方向が痛みが少ない、(4)じわっとゆっくり引っ張り、急に引かない、ことです。
ただしあくまで基本ですので、わざとはずして(例えば、髪の先の方をもって引く)こともありますが、それはさらに上級編なので、まずはこの基本で練習するのがよいでしょう。
養毛剤のCMですが、毛がどうやって成長するかをアニメーションで分かりやすく示しています。
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