鳥は菱形の庭に降りる・・

 ところで、みなさんはSalon de SMのトップ画で使っている「鳥」のようなイラストは何の模式図かお分かりですか?「そんなの知ってるよ」って方は読み飛ばしてくださいね。

 

 

 

 

この「鳥」のようなイラストが表すのは、実は「クリトリス」なのです。

「???。何言ってんの?」って訳がわからなくなってしまった方は、ちょっと難しい言葉が出てきますけど、教養のために頑張ってお勉強しましょうね。

男性の「ペニス」は「亀頭」だけではなく「竿」の部分を含めてそう呼びますよね。普通みなさんが「クリ」と呼んでいるのは「クリトリスの亀頭部」にすぎないのです。「クリトリス」が本来意味するのは、この表に出た鬼頭部分を含めて、それにつながる全体をさし示す言葉で、このクリトリス全体の模式図が「鳥」の絵なのです。

ペニスの場合は大きく体の外に出ているので、「竿」の部分がどんな形で、それがどう変化するかもわかりやすいのですが、クリトリスは、そのほとんどが体の中に埋め込まれているために、全体像を目にする機会はないのです。

目にする機会もないし、クリトリスそのもに注目が集まるようになったのも、比較的最近のことなのです。19世紀の西欧の禁欲的な社会では、クリトリス性感は封印されていたようですが、20世紀初頭にかのフロイドがクリトリス性感の再評価をおこない、女性のオーガズムは「クリトリス」によるものと「ヴァギナ」による2種類がある、と発表したそうです。でも、フロイトは「ヴァギナで得られるオーガズムがより成熟した女性のものである」と考えていたみたいですね。

近年、画像診断技術等の進歩により体の中の複雑なクリトリス構造のリアルタイムの変化がよく分かるようになり、それと平行してクリトリスの正しい理解を深め、その地位を高めようという啓蒙活動も盛んにおこなわれているのです。

 もう一度「鳥」のイラストに戻りましょう。あとの説明を分かりやすくするために、これから下の説明で使う名前を決めておきますね(図1)。

図1 クリトリスの「頭」「体」「脚」「バルブ」

まず「鳥のくちばし」みたいなところ。ここは正式には「Clitoral glans(クリトラル・グランズ)」「陰核鬼頭」と呼びます。いわゆる普通にクリトリスっていっている、ちょこっと見えているピンク色のものです。簡単に「」て呼ぶことにしますね。

この頭につながるように、体の中には「Body of clitoris(ボディー・オブ・クリトリス)」「陰核体」というのが隠れています。「鳥」の絵でいうところのクチバシの続きで、折れ曲がっているとこらへんまでの部分です。「シャフト」なんて呼ばれることもあるみたいです。直径は1〜2センチで、長さは2〜4センチあるそうですよ。「」と呼びましょう。

この「頭」と「体」から、大きくしたに向かって左右に4本の細長い部分がつながっていますね。4つのうちの、「鳥」のイラストでいうと「羽」のように見えるこの2つの部分を「crus of clitoris(クラス・オブ・クリトリス)」「陰核脚」と呼びます。「羽」でなく「脚」なんですね。確かに広げた脚のように見えます。「」と呼びましょう。

この「脚」の内側に、「脚」よりは太くて、ぶよぶよと描いている、やはり一対の構造物がありますよね。これを「vestibular bulb(ベスティバラ・バルブ)」「前庭球」と呼びます。「バルブ」と呼んで起きましょう。「脚」も「バルブ」も、その大きさや形はかなり個人差が大きいようですが、おおざっぱには5〜9センチの長さがあるようです。

5〜9センチの細長い4本の「脚」「バルブ」をたばねるように、2〜4センチの「頭」「体」が折れ曲がってついています。ちょっと指先で5〜9センチをイメージしてください。クリトリスなんて小さいと思っていたかもしれませんが、その全体像はかなり大きなものですよね。よく「頭」(外に見えるクリトリス)を「海上に顔を出す氷山の一角」といった表現をするようですが、確かに体の中には、表面からは想像できない大きなクリトリス本体が埋もれているのですよ。

ペニスの「鬼頭」とか「茎」と比べてきましたが、実際、生物学的にはペニスとクリトリスはとてもよく似た構造をしているのですよ。この説明をするために、簡単にペニスの構造も勉強しておきましょう。

「オチンチンのことならまかせて!いろんな形の知っているから」という貴女も、ペニスの内部構造は知らないのでは?(別に知っておく必要もないのですがね)。図2には、ちょっと残酷なペニスの輪切りの模式図が書いています。先っぽでなくて、茎の部分ね。

図2 オチンチンの残酷輪切り図。

大きく3つの構造体があつまってペニスの茎を作っているのがわかると思います。「陰茎海綿体」と書いてる1対の赤い部分がありますよね。これがクリトリスで説明した「脚」の部分です。脚も一対ありましたよね。「尿道海綿体」と書いてある黄色の部分が、クリトリスの「バルブ」に相当する部分です。クリトリスのバルブは1対ありましたが、男性のペニスでは融合して、見かけ上1つになっているのです。さらに、男性の場合は、この「バルブ」の中に「尿道」が通っているのですが、女性の場合は、後で述べるように、クリトリスの下に尿道が走っているという違いがあるのです。

「え?ということは、クリトリスも海綿体でできているの?」

その通り、クリトリスの「脚」も「バルブ」も立派な海綿体です。ペニスが勃起するのは、筋肉でぐいっと引っ張ってエレクトさせているのではなく、血液を多量に送り込み、その流れを筋肉で止めることによってそうしているのです。ご存じですよね。この血液を用いた膨張・硬化器官が海綿体なのです。「陰茎海綿体」も「尿道海綿体」も、興奮すると血液がどっと入ってきて、大きく固くなる「海綿体」です(「陰茎海綿体」と「尿道海綿体」とは、ちょっと構造が違うのですが、それはまた後々ね)。

同じように女性のクリトリスも興奮すると血液がどっと入ってきて大きくなるのです。

2002年にワシントン大学の放射線学のグループが発表した興味深い論文があります(Radiology, 225:981)。ここでは23から66才までの12人の女性ボランティアを被験者にして、ビデオを見せながら、彼女たちの体の中のクリトリスの血流と大きさの変化を、MRIとよばれる検査装置(大きな病院でいろいろな検査に使っている診断装置)で観察しています。最初は、普通のビデオを見せておき、途中で急に内容がエッチな場面になるそうです。その時の変化を調べると、「頭」の部分「体」の部分への血液流入量はそれぞれ4割、2割増加し、「脚」「バルブ」を含めたクリトリス全体の体積は、なんと平均で2倍以上に膨れあがったそうです(図3)。ちなみに、カーママッサージ美容術で用いる陰核クリームは、「頭」への血流を促進する成分が含まれていますので、あんなに気持ちよくなるわけですね。

図3 エッチなビデオを観てコーフンした時に膨れあがる体内のクリトリス。図の赤色は尿道で青色はヴァギナ。

女性が性的興奮すると、確かに外から見えるクリトリスは大きくなっているのですが、体の中のクリトリス全体では、2倍以上に膨れあがっているのですね。驚きです。

これをみても男性のペニスと女性のクリトリスが良く似たものであるのが分かりますよね。さらにつけ加えるなら、男性の亀頭ってのは、図2の輪切りにした「尿道海綿体」と連続したものなのですが、女性の「頭」もやはり「尿道海綿体」に相当する「バルブ」と連続しています。そして「体」は「脚」とつながっています。なので、大きく4つの部品からなっているのですが、「頭とバルブ」「体と脚」との2つに整理することができるのです(図4)。それぞれ基本的には海綿体ですが、膨張率などはそれぞれ異なっています。

 

図4 オチンチン(左)とクリトリス(右)の基本構造は同じ。

さてさて、いろんな専門用語が出てきて、眠くなってきませんか?

あまり、一度に詰め込むのもよくないですね。

次は、このクリトリスの5〜9センチ「脚」「バルブ」が体のどこにあるのかを学んでいくのですが、別の記事として書くことにしましょう。

 

クリトリスに関連した以下の記事もお読みください。

 

『ジスイズ・オルガズム美容術』