「クリションマン」は「クリ逝き」と「中イキ」をつなげてくれる、愛のキューピットかもしれません。あるいは、ただの捏造宇宙人かも。
さてさて、前回の『クリションマンの野望:序章』に続き、「クリションマン」=「クリトウレスロヴァギナル複合体」のお勉強をしましょう。
「お勉強なんていやだ」って人も、「Gスポットのお話しなんですよ」と聞くと、ちょっと読んでみようかな、なんて思うはず。
で、前回は、世の中には「Gスポットなんて無い!」って思っていらっしゃるエライ先生がたくさんいるようで、ようするにGスポットと呼ぶにふさわしい、「組織」というか「器官」みたいなのは、オマンコの中をいくら解剖しても顕微鏡で観察しても見つからんぞ、というわけなのです。
でも、いわゆるオマンコの入り口の上側部分を刺激すると、気持ち良いですし、ぷっとふくらみますし、人によっては潮を吹いたり、オルガズムに達したりするのは事実ですよね。
この解剖学的な観察と、実生活の体験との折り合いをつけるために、今回、イタリアのエマニュエル・ジャニーニという先生たちが、「Gスポット」と呼ぶのやめて、「クリトウレスロヴァギナル複合体」と呼びましょうと提案しているわけです。
こんな長い名前流行るわけないですよね。
まあ、それはさておき、どうして「Gスポット」と呼ぶのやめて「クリトウレスロヴァギナル複合体」と呼ぶべきだと考えるにいたったのかを、ちょっと詳しく勉強しましょうというのが、この「クリションマン」シリーズのコラムです。
ちなみに、「クリションマン」は「クリトウレスロヴァギナル複合体」のサロンさんによる意訳です。
共著者のオディール・ビュイソン博士
さてさて、このエマニュエル・ジャニーニ博士の論文は、フランスのオディール・ビュイソン博士など合計3名で書かれて「ネイチャー:泌尿器分野のレビュー」という雑誌に「オピニオン」という形で発表されています(1)(なので、正確には研究論文ではありません)。ジャニーニ博士はおっさんなので、キレイなビュイソン博士の写真だけを今回は載せておきましょう。
まずは、Gスポット論争の背景が丁寧に説明されています。とても勉強になりますので、順に解説していきましょう。
まずは、医科学において「解剖学」ってのは、かなりはっきりと物事を明らかにする学問なんだけど、こと女性の性器に関してはそうだもないんだと始まります。
そう、医学ってのは解剖から始まってるんですよね。「見ることは信じること」というように、目での観察ってのはサイエンスの基本なんです。なので、解剖学者や病理学者、組織学者は、医学の世界ではエライのです。
次にですね、「女性のオルガズムには少なくとも2つのタイプ」があります、と続きます(男性は1つ。つまり射精のみとされています)。
面白いですね。それは
なんです。
英語が出てきたら眠たくなってきましたか?
大丈夫、日本語は分かりやすいです。
です。
ね、わかりやすいでしょ?
「クリ逝き」はクリトリスへの刺激によりオルガズムに達することで、「中イキ」はチンポをオマンコニに入れられている時に得られるオルガズムで、クリトリスへの直接的刺激を伴わないものです。この場合の「クリトリス」は、「陰核亀頭」のことで、体の外に顔を出している部分のことです。
そして、この「中イキ」=「VAO」に関しては、そのメカニズムがよく分かっていないと。つまり、解剖学的にどこをどう刺激したら、何がどうなって、オルガズムに達するかが分かっていないと。
そもそもオルガズムそのもののメカニズムがよく分かっていないので、もっともなことです。「クリ逝き」の場合には、クリトリスを刺激して、クリトリスに集中している感覚神経が刺激されてどうのこうので、なんだか分かったような気分になれるのですが、オマンコの場合は、そもそも「感覚神経があんまりないんだ」と思われているんです。
ここで、ジャニーニ先生達は、問題を4つに整理しています。すなわち、
- クリトリスと膣との機能的な関係がいまだによくわからん
- 膣に感覚神経がたくさんあるのかどうかがわからん
- Gスポットが1つの独立した器官なのか、複合体なのか、マスコミの作りだした神話なのか、美容整形外科の方便なのかわからん
- 女性のオマンコの構造は個人差がメチャある
なんです。
1と4はようするに、女性のマンコ帯はまだ、医学的にはわかんないことだらけだと。
3は本題ですよね。Gスポットの実体はないから、既存のクリと尿道と膣を使って考えましょう、というのがこの先生達の主張です。
2は、調べたらわかりそうなのに、わかってないんですね。面白いです。この先生達の論文も、まずここから考え始めています。
オマンコは本当に鈍感なのか?
「8,000本の枝のもたらす至幸」 にも書きましたが、クリトリスには、特にクリトリスの亀頭(いわゆる、みなさんが目にする体の外に顔を出している部分)にはとてもたくさんの神経が集まっています。その数もチンポの神経よりも多いとされていますし、大きさが違うので、密度にすると、圧倒的に女性のクリトリスの神経の方が、チンポのそれより多いわけです。
ですから、クリトリスが、とても気持ち良い部分であることと、話が一致していて分かりやすいですね。
一方で、オマンコの中、いわゆる膣の部分には、他の体の部分に比べて、神経の数が少ないんじゃないか、って考えられています。
これは、出産の時に、赤ちゃんが通るので、神経多すぎると、痛くて困るからだ、といった説明がついて、なんとなくそうかなと思わされてしまうのですが、まあ、こういう後付け的な説明は、あまり信じなくてよいのです。
神経の数ですので、数えれば白黒がつくのです。
と、思うのですが、どうも膣の神経の数については、まだみんなが納得できるような研究が発表されていないようです。
Gスポットというのは、おおかたはオマンコの入り口近くの、上側にあるとされています。
医学的には、
AVW=anterior vaginal wall=膣前壁
のさらに、「遠部」という場所です。
Gスポットが気持ち良い場所なら、この遠部膣前壁領域に、神経が密に存在しているに違いないと、いくつかのグループの研究者達が調べてみたそうです。
「調べれば簡単」と言いましたが、確かに細い神経があるかどうかは、オマンコのその部分を切り取って、固定して、染色して、顕微鏡で観察しなければならないのですから、なかなか検体を集めるのが大変ですよね。何かの手術で、たまたまその部分を切り取ったとか、死体解剖でしか調べられないので、そう簡単にいかないことも分かります。
ジャニーニ先生達は、過去の他のグループの4つの論文を紹介し、そのうちの1つは「オマンコの前と後ろで神経の多さを比較したが、変わんない」と言っているのに対し、他の3つはなんらかの神経の数の偏りがオマンコの中で観察されている、と紹介します。
「3:1だから、やっぱオマンコの入り口上側は敏感なんだ」とはいかないのが、この世界。意見が分かれているときは、さらなる慎重な分析が必要なのです。
まあしかし、「オマンコの中に神経が全然ないということはないですよね」とまとめてるんですが、できれば、他の部分との神経の密度の比較などを示してくれたら、もうちょっと分かりやすかったのですけど・・・
感じとしては、「オマンコの中は神経が少ないと信じられてきたけど、そんなこともないんと違う?なんだか、入り口近くの上側は、特に神経多そうよ」って、感じのところでしょうか。
しかしです、「神経が多い」といっても、それが「中イキ」と関係しているか、というとそれは、また別問題なのです。
実際、神経密度の偏りと「中イキ」の関係を調べた論文はまだ無い、とジャニーニ先生達は述べています。
でも、その「遠部膣前壁領域」とかいうところマッサージすると、多くの女性が「中イキ」するのは、われわれみんな知ってるのですが・・
まあ、頑張って研究してください。
オマンコの動き
次にジャニーニ先生達が論ずるのが、オマンコは単なる受動的な筒でないぞということ。
ん?
ここでのオマンコはいわゆる「膣」でチンポが入っていくところ。
「膣」ってみなさんどう考えているんでしょう?
サロンさんなんか、膣はおチンポを包んでくれて、キュッと締め付けたり、ザラザラで亀頭を刺激してくれたり、ヌメヌメしてくれたりと、チンポといろんな方法でコミュニケーションしてくれる素晴らしい体の一部、って思っているんですけでど、「膣は単なる受動的な筒でしかない」なんて考えている人も多いのでしょうか?
ジャニーニ先生達は、「膣は単なる受動的な筒と考えるよりは、性交において大切な役割を果たす収縮器官であると考えるべきであ〜る」と言っています。
あたりまえのような気がするのですが。
で、面白い論文紹介しています。エジプトのカイロ大学の医学部の論文なのですが、26歳から56歳の24人の女性のオマンコの中に電極を仕込んで、オマンコから発生する電気パルスを測定してるんです。さらに、膣内にコンドームを入れて、それをガスで膨らまして、擬似的なチンポ挿入状態を作ったり、局所麻酔剤で、膣壁の特定部分の神経を麻痺させたりして、生じる電気パルスの変化を観ています。
擬似チンポ挿入でマンコ電気パルスが活発化
この論文面白いです。2004年に発表された研究です(2)。
まず電極をオマンコの中に複数つけて、その広がりの方向を調べています。
結果、電気パルスはオマンコの上側から発生して、下側に伝わるように広がっているそうで、「ペースメーカー」となりうる細胞がオマンコの上側に存在しているのじゃないかと想像しています。
この電気パルス、周期が随分遅いです。上のグラフを見て分かるように、10-20秒といった間隔でパルスが出ていますね。
で、擬似チンポ挿入状態にすると、この間隔がどんどん早くなります。上のグラフでは、一番上がチンポ挿入なし、真ん中が、細いチンポ挿入、下が太いチンポ挿入状態を模した結果です。太くなるほど、パルス間隔が短くなってますね。
で、きっとこの電気パルスは、オマンコの筋肉の収縮に関係しているんだろう、パルスを発生する「ペースメーカー」細胞は、オマンコの上側に存在して、そこをチンポが突くと、パルス間隔が強くなるんだ。この「ペースメーカー」細胞があるところが、Gスポットと呼ばれる部分かもしれない・・・
とここまで呼んでくると、なんだこの人達、バリバリの「Gスポット信者」かと分かるのですが・・・
なので、ちょっと割り引いて評価した方がよいような気もしますが、客観的な測定方法としては、なかなか発展性のあるものではないかと、サロンさんは素人ながらに思ってしまいました。
で、このカイロ大のグループ、さらに2007年にはこの「ペースメーカー」細胞をさらにつきとめるべく、オマンコの中をあれこれ捜しまくり、「カハール介在細胞」っていう胃や腸の運動を司る細胞がオマンコの中にあるかを調べて、それがオマンコの上側にあったって報告してるんです(3)。
ここでは23人の女性のオマンコのサンプル(亡くなった方からの献体です)を顕微鏡で観察し、「カハール介在細胞」に特有な性質をもつものの分布を、抗体を用いて調べいるようです。
オマンコの細胞の顕微鏡観察。右上の矢印で示した細胞が「カハール介在細胞」なんですって!よくわかんないですけどね。
実験データがちょっと貧素で、かなり結果ありきの研究の匂いがしますが、でも、お話しとしては面白いですよね。
しかも、このエジプトグループが突き止めた「ペースメーカー」細胞は、オマンコの「上側の奥」にあるんです。
「オマンコの上側の奥」といえば、ヴァニラマッサージ美容術で注目している、サロンさんが名づけるところのヴァニラスポットではありませんか!あるいは「A, T, G, C・・といろいろあります」でまとめていますように、人によって「Aスポット」「AFEゾーン」「エピセンター」「ディープ・スポット」「第2Gスポット」「Tスポット」「第2のポイント」とか呼んでいるところで、実践的には明らかに重要な性感ポイントなんです。
実践派の人たちはこぞって、このヴァニラスポットの重要性を指摘しているんですけど、いわゆる医学界のエライ先生達は、一部の例外を別として、全然注目してないんです。「クリトリス」と「Gスポット」が彼らの関心事。
なので、ジャニーニ先生達も、このカイロ大学の研究に関しては、「ペースメーカー」細胞がオマンコの「上側の奥」にあるんじゃ、オマンコの「上側の入り口」のGスポットと話が合わないな〜、と少し冷ややか。でも、サロンさん的には、「入り口」より「奥」の方が断然重要なんですけどね。
ということで、お勉強シリーズは次回へと続きます。
オリジナル文献
(1) Jannini, E.A., O. Buisson, and A. Rubio-Casillas, Beyond the G-spot: clitourethrovaginal complex anatomy in female orgasm. Nat Rev Urol, 2014. 11(9): p. 531-538.
(2) Shafik, A., et al., The electrovaginogram: study of the vaginal electric activity and its role in the sexual act and disorders. Arch Gynecol Obstet, 2004. 269(4): p. 282-6.
(3) Shafik, A., et al., Identification of a vaginal pacemaker: An immunohistochemical and morphometric study. J Obstet Gynaecol, 2007. 27(5): p. 485-8.
『クリションマン4部作』
『ジスイズ・オルガズム美容術』