国際性科学学会がまとめた、オマンコ研究の最前線をご紹介しましょう。「ザ・オマンコ2016」です。
「ナニナニの結果が論文に発表されました」「コレコレの発見をナンチャラ大学が発表しました」「ソレコレについて○×医師が解説してくれました」とかニュースに出ると、あたかも新しい真実が大発見されたような印象を受けますが、おおかたの場合は、「そういう意見もある」といった程度。「ホントにホント」、つまりほとんど全ての専門家が同意する新しい発見ってのは、なかなか出てこないものなのです。特に、心のからんでくる分野はみんなの同意が得られにくく、さらには、セックス分野で、『逝く』『快感を得る』といった心の部分が入って来ると、とたんにややこしくなります。
よい例が『A, T, G, C・・といろいろあります』に出てくる『Gスポット』。生殖器としてのクリトリスなんかだとまだよいのですが、『性感スポット』となると、性感の定量化をどうするかなどがややこしくなってきて、途端に同意は得られにくくなります。
『Gスポット大戦』『クリションマンの野望:序章』『クリションマンの故郷』『暴れん坊クリションマン』『クリションマンの正体』などでも繰り返し書いてきましたように、『Gスポット』があるのか、はたまたまぼろしなのか、これまで延々と議論が続いており、いまだに結着はついておりません。
「いや、○○大学が、無いことを証明したという記事があったぞ」「○○博士がついてに見つけたってニュースになっていたぞ」と言われるかもしれませんが、これらはいずれも、延々と続いている議論の、それぞれの立場の新たな発言が出た程度。
こういった結着のつかない議論ってのは、科学の世界には、普通にごろごろあるのですが、なかなか専門外の人間には、状況が掴みにくいですよね。
こういう時に比較的に役に立ちそうなのが、「学会」が出している、ポジション・ペーパーというか、総説みたいな論文で、その時点での学会の取る、考え方といことが、比較的フェアな立場で書かれています。
もちろん、学会といっても、『Gスポット』を取り扱い対象とする学会もたくさんあり、それぞれの学会の立場により、考え方も違うので、「○○学会が言っているので正しいのだ」と信じてもだめなんですが、まあ、「○○医師が言っている」とか「○○大学が発表した」よりかは、まだ安心かも。
ということで、今回は「国際性科学学会」が出している「性医学ジャーナル」にこの春に掲載された国際性科学学会マンコ委員会による「ザ・オマンコ2016」をご紹介しましょう。だいたい、今までサロンさんがブログに書いてきたことの復習になりますが、これを機会に頭の中を整理するのもよいかと思います。(正式には、もちろんオマンコ委員会なんて名前でないですけど、覚えやすくするために仮にそう呼んでます。)
この総説は6パートに別れています。それぞれ担当の研究者が執筆を担当しているみたいです。この6パートにそって解説しましょう。
1. オマンコの構造
「最近いろいろとおっしゃる方もおりますが、存在すると提案されているのGスポットの解剖学的、機能学的性質解析は混乱しており、よりしっかりとした、厳格な検証が必要とされています」
ですって。オマンコの構造の話題としては、『Gスポット』が一番注目されてるけど、まだ「あるとは言えない」ということです。
冒頭にこれが書いてあって、続いて、オマンコの構造の説明に続きます。まあ、ここらへんはSalon de SMのコラムの読者のみなさんには、説明はいらないと思います。
手書きの図がついていたりして、面白いです。
みなさん、1から7まで全部何か言えますか?
1は「クリトリスの体(body of clitoris)」と呼ばれところ。陰核亀頭(いわゆる、みんなが普通クリトリスと思っている、体の表面に出ている部分。図の2)から続き、恥丘の部分の体の内部を下から上に走っている部分です。なので、外からは見えません。
この「クリトリスの体(body of clitoris)」は、体の中でやがて2本に別れ、図での3に相当する「クリトリスの脚、あるいは陰核脚(crus of clitoris)」となります。陰核脚は恥骨にべったりとくっついています。これはまさに「脚」として、骨盤(ペルヴィス)(図の7)を大地として踏ん張り、クリトリスの勃起を助けてくれます。
この構造はチンポも同じで、チンポも体の中で2本に別れ、恥骨で踏ん張っていることは、既に『鳥は菱形の庭に降りる・・』で紹介した通りです。
4は尿道口で、5は膣口、つまりチンポが入って来る穴ですね。
6は分かりますか?小陰唇?いえ、この図は体の中を中心に描いているので、大陰唇、小陰唇は描いていません。これは「クリトリスのバルブ、あるいは前庭球(Vestibular bulb)」と呼ばれる器官でしたね。尿道と膣を外から取り囲む様に存在しています。
この「クリトリスのバルブ」と「小陰唇」「陰核亀頭」「クリトリスの体」そして「尿道(の回りの組織)」は、血管が入り組んだような構造をとっており、エッチな気分になると勃起するんです。これはチンポも同じで、興奮すると、この血管が入り組んだ構造に血液がどった入ってきて、大きく、固くなります。
なので、カーママッサージ美容術で、「パンクリトリス全体の勃起をめざしましょう」というのはここのこと。「陰核亀頭」だけでなく、「クリトリスの体」「クリトリスのバルブ」と「小陰唇」「尿道」も全部勃起させるんです。でも、「クリトリスの体」「クリトリスのバルブ」「尿道」は、体の内部に存在するので、勃起したかどうか、外からでは分かりません。「パンクリトリス全体の勃起」の目印となるのは、「小陰唇」が充血して、ビヨンと飛び出した状態になっているかどうかです。・・・・ここらへんは、この総説には書いている訳ではありませんが・・・
総説に戻りまして、この「血管が入り組んだ構造」には2種類あると。1つは柱状勃起組織(Trabeculated erectile tissue)で、「陰核亀頭」と「クリトリスのバルブ」がこの組織をもちます。これはチンポに似ており、勃起すると大きさと固さの変化がかなりあります。
一方、「小陰唇」と「クリトリスの体」「尿道」を形成する組織は、血管は少なく、興奮すると共に、血液の流入量は増えるものの、「勃起」とまで呼べるような大きな変化はないということです。でも、「小陰唇」の勃起は、ちゃんと目で見て分かりますよね。膣壁も、同じような組織があると書いておあります。
「尿道」は、これまで生殖器官とはみなされていなかったのですが、最近の研究では、上に説明しましたように、エッチな気分になると血液流入が増えて、反応することが分かってます。ですし、「クリトリスのバルブ」にも挟まれているので、お互いに接しています。
「尿道」は膀胱からオシッコを導く管なのですが、その管の内側に、全体にわたって「腺」が存在するそうです。「腺」というのは、「唾液腺」 「汗腺」「消化腺」など、何らかの「お汁」を出す組織で、『スキーン!』『おつゆ』などでも登場しましたよね。スキーン腺は、一般的にその出口は、尿道口附近、つまりオマンコの前面とされているので、尿道の管の内側に開口している腺ってのは、何なのですかね?サロンさんの今後の宿題とさせていただきます。あるいは、「内側に、全体にわたって腺が存在」していても、開口部(出口)は、オマンコの前面だけなのかもしれませんね。これなら、スキーン腺のことを言っていることになります。
この尿道の「腺」から、男性の前立腺の成分と似たようなものが検出されるので、女性版前立腺だという提案もあるそうですが、前立腺のように、何かホルモンを出している証拠はないのが現状のようです。
で面白いのは、この「腺」という構造は、いわゆる膣にはないんです。これは『おつゆ』でも紹介したとおりです。
「マン汁」も奥が深く、正体不明。今のところ、膣の外側の毛細血管から浸みだしてくる血漿成分が、膣壁を通過して、膣内に出てくるとされています。こに加えて、子宮頸管粘液、バルトリン腺液、スキーン腺液などが混じってくるので、複雑なのです。そういう難しいことは離れても、女性によって透明なまん汁出す人あれば、クリームのようなまん汁出す人、始めサラサラで、後ネバネバ、とかいろいろあるので、複雑なんだなとかねがね関心しております。
2.「逝く〜」の生理学
各節、オマンコ委員会からの「推奨」で始まります。ここでは
「(1)医学的、外科的にGスポット機能がありそうなことを支持するデータは何もない。あるいはGスポット機能不全が原因と思われる特異的疾患は何もない」
「(2)クリトリスの脚とクリトリスのバルブは、エッチな気分になると充血するのは分かったが、それが性機能に何か関係するのかどうかは不明」
「(3)オマンコの濡れ具合を性的興奮度の指標として定量化するきっちりとした方法はまだ確立されていません」
「(4)チンポ挿入時に、どこの場所で逝ったかという女性の自己申告は、そもそも興奮して意識がはっきりしていないし、器官の名称や場所を正確に知っているわけでもないので、データとしては信憑性に欠けます」
ですって。またGスポットで始まっています。
さきほどは、解剖学的、つまり「物」としてのオマンコ観でしたが、次は「機能」。「心」と「体」が絡んできて、ますます難しくなります。
(1)は、またまたGスポットに関しては、あるとはいえない、という意見。
(2)は、「パンクリトリス全体が勃起していても、それが何か機能的に役に立ってるのかは、まだ分からんよ〜」という慎重な立場。
(3)は、「マン汁」研究の技術的難しさ。「マン汁」は奥が深いのです。マン汁がどれだけでたかと、きちんと測定する統一的な方法がないんです。
(4)は、ようするに「中逝き」なんて、ほんとにあるんだろうかという、学会の現状の雰囲気を示しています。
(3)も(4)もこの手の研究の定量化の難しさを示しています。
サイエンスの基本は定量的な評価です。
なので、性的興奮を「血圧変化」「心拍数変化」「呼吸数変化」「乳首の勃起度」「クリトリスの増大量」「マン汁の分泌量」などで定量化するわけですが、後に行くにつれて、「確立した定量法」というのがなくなってきます。測定方法によって結果がばらばらだと、サイエンスとして信頼度が薄らいでくるわけです。
さらには、精神的な変化となるとますます定量化が難しい。多くが、被験者の申告による研究になりますが、(4)では、性的興奮時の認知が、そもそも通常と違うので、方法そのもに無理があるのと違いますか、という警告です。
観察としては、肉体的な興奮変化が起こらなくても、精神的に発情していたり、逆に、心のレベルでは全く興奮していないのに、体は反応する、というのは普通にあります。ここも難しいところ。
この総説では、五感の全てで性的な興奮は起こるが、この中でも「触覚」が特に重要だと言い切っています。唇、首筋、耳、脇の下、胸、乳首、恥毛、太腿、お尻、アヌス、蟻の門渡り、そして何よりもオマンコが敏感なのだ!と当たり前のことを長々と述べています。書きながら妄想して興奮してるのかな。
オマンコへの触覚刺激は、いろんな方法があって、バイブを使ったり、ディルドを使ったり、指を使ったり、口を使ったり、そして何よりもチンポだ!と、またまた興奮気味の記述が続きます。
チンポ挿入が、バイブやディルド、指マン、クンニと違うのは、チンポ挿入のみが「クリトリス」「クリトリスの脚」「クリトリスのバルブ」「小陰唇」「尿道」「ハルバン筋膜」「蟻の門渡り」「尿道」「子宮」「Gスポット」を同時刺激できるからだ!チンポ挿入で、女性は深いオーガズムに達することができるのだ、と盛り上がります。この節を担当して書いているのが、イギリスのジッちゃんなんですが、完全にチンポ主義者ですね。定量化の重要性を冒頭に述べながら、続いて、定量化できていないチンポ挿入によるいろんな場所への刺激を論じています。脇が甘いです。
続いてGスポットの話に移ります。
「いろいろGスポットに相当するものを見つけたという論文が出てるが、全て特定の器官を指し示してはいない」「あれやこれやいろいろ出てるけど、前部いいかげん」「Gスポットの機能不全による疾患なんて報告されてません」と、けんもほろろ。少し前には、チンポでGスポット刺激できると、興奮していたのにね。
クリションマンシリーズで紹介しましたように(『クリションマンの野望:序章』『クリションマンの故郷』『暴れん坊クリションマン』『クリションマンの正体』)、偉い先生方の最近の方向としては、「Gスポットなんて器官・組織はありません」「Gスポットってのは、オマンコの入り口付近、上側に存在している、パンクリトリス、尿道やいろいろな部分の複合体が複雑に反応して性感を誘導するんだ」と考えています。「オマンコの入り口付近上側」に焦点を当てたのが、「クリションマン」で、「オマンコの奥付近上側」、つまりSM美容でいるところのヴァニラスポットを含めた複合体を「ヴァックマン」と呼ばれています。それぞれ、正式な名称はありますが、難しいのでこう呼んでおきますね。「ヴァックマン」と、それに関係した「ハルバン筋膜」については、近いうちに詳しく紹介しますね。
次に、子宮逝き。いわゆるポルチオ逝きですね。チンポの先で、膣の奥の子宮の入り口をグイグイ突くあり、コネコネ動かしたりすると、ポルチオ逝き状態になり、大変なことになるとネットなんかによくありあすが、あのことです。研究でも、子宮の入り口が感じると証言する被験者があるとする報告もあるそうですが、解剖学的には、子宮にはほとんど感覚神経はありません。ポルチオ逝きは、こころの部分がさらに深く関連してくる、高次な生理反応ですので、Gスポットよりさらに解析が難しいです。解剖学者、生理学者にはお手上げの問題だと思います。この総説でも、「子宮で感じるって、まあないでしょ」って感じで、軽く流しています。
「クリトリスのバルブ」と「クリトリスの脚」についても、まだまだ性感との関係ははっきりしていないと、さらりの述べております。
次は、「マン汁」と「潮吹き」について。西側の文化では、「濡れマン」がこのまれるが、アフリカなんかでは、「濡れマンはだめ。乾いたマンコの方が、締め付けがよくてよろしい」という文化もあるそうで、わざわざオマンコを乾かせてからチンポ入れるんだ、と紹介しています。面白いですね。ここでは、最初に述べたように、「マン汁」の量をきっちりと測定する方法を確立しないといけません、とあります。「潮吹き」については、「尿道にそって並んでいる分泌腺から出る分泌液が吹き出る」と報告があるが、ほとんどは、「シッコ」でしょ〜、と軽く述べています。確かに、AVでの潮吹きはどうみてもシッコですよね。『世界しおふき物語』も再度お読みください。
最後に「オーガズム」。「これ以上難しい問題はない」と書いていますが、確かに。特に、生理学者が貢献できるのは、「マン汁」測定ぐらいで、限られてきます。被験者の主観的な報告も、深いトランス状態での感想なので、あまりあてになりません。今後時間をかけて解決していくべき課題なのでしょう。
3.実験室においての性機能評価と機能不全評価
この節は、実験室で、いかに性的興奮を測定するのか、という方法を紹介しています。
「淑女はお熱い男性がお好き」で、マンコの温度とか測定している実験しょうかいしましたよね。ああいう感じ。
上の写真とか、オマンコ用の「光電式容積脈波記録装置」なんですけど、こういうのをオマンコに挿入して(左の部分はクリの部分を測定するんでしょうね)、エッチな映画とか見せながら、オマンコの血流の変化なんかを測定するんですって。楽しそうでいいな!
といいうことで、飛ばします。
4.脳科学的解析
「オーガズム」をサイエンスするのは、ほんと難しいんです。Gスポットの比ではない。
そもそもサイエンスは、「物質」と「こころ」を分けて、とりあえず「物質」だけに焦点あてて考えましょ、ということで発展してきたわけですが、ここに「こころ」が入って来るととたんにややこしくなります。「メスマー美容術入門」は。そこれへんに一歩踏み出した、サロンさんの野心的なブログシリーズなんですけどね。ご期待ください。
『ポルチオ・ザ・ペルヴィス』『ザ・オルガズム』なのでも紹介したように、こういう「こころ」が入って来る領域をサイエンスにする時に、脳科学の手法が期待されます。特に、機能MRI法という、MRIの凝った測定法で、ある刺激で、脳のどの部分が活動しているのかが、よく分かるようになってきてます。でも、まだまだエッチ領域の研究を、こういった最先端の技術で研究するってのは、難しいですね。
ここでは、いくつか「オーガズム」に関する、脳科学的解析の報告があるが、出している結論も一致していないので、まだまだこれからだ、ってことが書いてあります。
エッチな画像をみてコーフンする脳の領域だそうです。
5.不感症の原因となる神経以外の機能疾患
「感じない」「感じすぎる」といった症状をもち、かつ、それに苦しんでいる女性の場合は、お医者さんはなんとか、それを柔らげようと、治療しようとします。シリアスな部分なので、ここでは触れません。
6.精神的不感症
器官や組織は、正常者と変わらないのに、「感じない」「感じすぎる」といった症状に苦しむ患者さんもいるわけです。この場合は、医学的には、神経科、精神科の領域の担当となります。上に述べたように、サイエンスは意外と「こころ」の問題は苦手とするので、臨床心理学とか、市井のカウンセラーさんなんかも活躍する領域かもしれません。
まあ、「Gスポット」は、医学的には「存在しない」ということでよいと思います。議論は延々と続くのでしょうが、結論は出ないです。
「そんなのあるの当たり前でしょ!」とお怒りになるかもしれませんが、「器官・組織」としての「Gスポット」はまずなさそうです。
「もの」を重視するサイエンスでは、ものがないと弱いのです。機能がどうのこうのとなると、とたんにメスマーの世界にはいって、「怪しさ」がつきまといます。
「Gスポット」ですらこの状況ですから、「ポルチオ逝き」なんてもっと大変です。
でも、「Gスポット」で潮吹いて興奮したり、「ポルチオ逝き」で頭が真っ白になったりするのは、事実起こるわけですから、その部分は研究者でなく、サロンさんなどのスケベで変態の一般人におまかせくださいね。
(参考文献)
Levin, R.J., Both, S., Georgiadis, J., Kukkonen, T., Park, K. & Yang, C.C. The Physiology of Female Sexual Function and the Pathophysiology of Female Sexual Dysfunction (Committee 13A). J Sex Med 13, 733-59 (2016).
Aスポットの探し方を分かりやすく説明しています。