梨を押すと槍が飛んできて飛び跳ねるような快感が襲います
4月13日号(2018)の『週刊ポスト』に「緊縛の世界」っていう記事があったので、買って読んでたのですが、同じ号に『死ぬまで死ぬほどSEXシリーズ 男は知らない分かっていない!『わたしたちの性感帯』教えてあげる 快楽スイッチ、押してください』って長〜い名前の特集がありました。
以前、『しほさゐにヨニの島に漕ぐ舟に・・』で潮吹きのことを書いた時も、『週刊ポスト』の「死ぬまでSEX 女性器の科学 絶頂の神秘」がきっかかけでしたので、このシリーズ、まだ続いているのですね。
「美女医、人気女優、グラドル、そしてとってもエロい美熟女さん・・・総勢35人のホンネ告白」
ってことで、女医さんのエロアイドル化もめざしたシリーズです。
今回は未知の「性感スポット」特集とかいうことで
などが紹介されてます。
ふむふむ。初めて聞く性感スポットがたくさんあります。名前からなんとなく想像できるものも多いのですが
『ピルム筋』
って何だ?
興味をそそります。
記事を読むと、
「ピルム筋はお尻の少し外側で、力を入れた時に少しくぼむ、お尻のえくぼのような場所」
らしく、後背位で性交する時に、ここを掴まれると凄く良いそうです。
あらま、そんな筋肉があるのかなと、さっそくグーグルサーチをしてみると、
筋肉にはヒットしないのですが、AV作品がひっかかります。
です。
ビデオのパッケージに、 のピルム筋の位置が示されてますよね。
お尻のやや外側の部分です。
パッケージにも説明が書いています。
「女尻の奥に眠る性感マッスルピルム筋」
「神経直結の新刺激で意識がとぶほど絶頂、絶叫!」
「私、お尻でイッちゃいました・・・」
「ピルム筋とは?(Pirum Muscle)お尻の最深部で神経と密接している筋肉。特殊な刺激で乳頭、陰核を上回る身体最高の性感帯と化す。」
とあります。
ふむふむ英語か何かしりませんが、「Pirum Muscle」と書くのですね。
ピルム筋でグーグルサーチしても、筋肉はひっかかりませんが、「Pirum Muscle」で捜すと
「Muscle piriforme(マッスル ピリフォルム)」
がひっかかります。
これは『梨状筋(りじょうきん)』という実在するお尻の筋肉です。
「梨のような形をした筋肉」ということで、この場合、西洋なしのような円錐形を想像してください。
DVDをレンタルして観てみたのですが、その中でピルム筋の位置を解説する場面があるのですが、
ここに示されているのも『梨状筋(りじょうきん)』です。
「Muscle piriforme(マッスル ピリフォルム)」
の「pirforme」が「梨の形」を意味するのですが、
「Pirum」というのをさらに詳しく調べると
「Pear(梨)」の語源だそうで、話があいます。
解剖学の教科書的には「Muscle piriforme(マッスル ピリフォルム)」や「Musculus piriformis(マッスル ピリフォーミス)」と呼ぶところを、「梨」の古語の「Pirum」を使って「ピルム筋」という新しい言葉を造語しているようです(Pirum Muscleという呼び方が、どこかの国か、どこかの業界で既に存在している可能性もありますが)。
いろいろ書きましたが、ようするにこの「女尻の奥に眠る性感マッスル」とは『梨状筋(りじょうきん)』です。
『梨状筋(りじょうきん)』の位置をもう少し詳しく見てみましょう。
上のAV作品には
「大臀筋の深部に位置する筋肉で、お尻の脂肪に覆われている為、
性感帯としては、あまり認知されていません」
とあります。
確かに位置的にはその通りで、梨状筋は脚(股関節)を動かす重要な筋肉で、大腿骨のつけ根と、仙骨とをつないでいます。
「深層外旋六筋」の1つでもあり、名前の通り、体の奥底(深層)に存在する筋肉です。
上の図は、お尻付近の右脚あたりの筋肉を剥いて中をみたものです(CGですが)
骨盤の下に黄色の楕円で囲った三角形にみえるのが梨状筋=ピルム筋。
左が仙骨につながり、右は大腿骨のつけねにつながっています。
オマンコとアナル(直腸)の位置も示していますので参考にしてください。
AVのパッケージには
「神経直結の新刺激で意識がとぶほど絶頂、絶叫!」
と書いています。
実際、梨状筋のある位置には、重要な神経がたくさん通っています。
この上の図の、黄色が神経を表しています。
かなり太い神経が見えますが、これが「座骨神経」。
一部水色をつけた神経があるのですが、これが「陰部神経」(上の図では「クリ神経」と書いています)といって、オマンコの入り口や、クリトリスにいっている神経で、これも梨状筋の横を通っています。その他にも、アナル附近につながる会陰神経というのもこの近くをはしっています。
週刊ポストの記事には
「東洋医学では『環跳(かんちょう)』と呼ばれ」
と書いています。これはツボの名称で、
確かにその位置は、梨状筋の場所と一致しています。
さて、梨状筋=ピルム筋の近くには神経がたくさん通っていますし、ツボの環跳とも一致します。
ただし、環跳は性感ツボとしては知られている訳ではなく、腰痛緩和などのツボとして有名です。
また、梨状筋は、座骨神経を圧迫して「梨状筋症候群」という痛みをおこしたり、あるいは会陰神経などを圧迫して「陰部神経痛」などを引き起こすことでも有名のようです。性感との関係は指摘されていないと思います。
でも、性感ツボが密集している仙骨につながっていることや、子宮や直腸の近くにあること、陰部神経、会陰神経が近くを走ることを考えると、
「女尻の奥に眠る性感マッスル」
というキャッチも、なんとなく本当らしく響いてしまいます。
おそらく、『ボインタッチ』で紹介した『スペンス乳腺尾部』と同じく、それらしい実在する組織を引っ張り出してきて、新しい流行を作り出そうとするAV製作者側の戦略なのでしょうが、なかなか凝っていて、感心します(ちなみに、上のAVの中ではしきりと「ピルム筋尾部」と言っているのですが、これは『スペンス乳腺尾部』を意識しているのかもしれません)。
特に、「Muscle piriforme(ピリフォーミス マッスル)」をそのまま使うのでなく、より覚えやすくて言いやすい、「Pirum(ピルム)」に置き換えているところが、センスありますね。脱帽です。
ところで、ややこしいのが、週刊ポストの記事には
「ピルム筋は医学用語ではない。AV女優たちの経験則で広まっていった」
「ピルムとは古代ローマの兵士が使用した投げ槍」
「槍で突かれたような快感が走ることから、その名がついたとも」
とあるのです。
確かに、ピルムとは「槍」のこと。
ゲームなんかのアイテムでも「ピルム」とか出てきます。
上のおっさんが持っているのが「ピルム」です。
でも、こちらは綴りは
「Pilum」
なんです。
梨=Pirum と 槍=Pilum で、日本語では同じ発音ですが、ヨーロッパ古語では、起源は異なるようです。
さて、AV作品(宇佐美忠則という監督が作った2017年のムーディーズの作品)と、週刊ポストが書いている「AV女優たちの経験則で広まっていった」と、どちらが先なんでしょうか?
AV作品が先だとすると、「梨状筋=ピルム筋」で作られた造語が、「ピルムってなんじゃ?」「知ってる、槍のこと」「そうか、槍で突かれたような感じなのか」で進化したのでしょうし、「AV女優たちの経験則で広まっていった」が先なら、「お尻つかまれてチンポで突かれると、槍で脳天つかれたみたいに気持ちいいわ」を聞いたAV関係者が、槍=ピルムだから、「Muscle piriforme(ピリフォーミス マッスル)」をピルム筋として、新しい性感スポット作っちゃえ、って感じで生まれたことになります。
まあ、どっちでもいいのですが、お尻は、なぜたり、叩いたりすると、気持ち良いのはよく知られたこと。
さらに、性感ツボを意識して、ぐっと押し込むと、槍で脳天つかれたみたいに気持ちよくなることがあるのかもしれません。
これは、試す価値があるようですね。
長い針(長鍼)で梨状筋などの体の奥底の深層筋をズブリとさしてほぐします。腰痛治療のようです。
ピルム筋の位置と重なる経穴の環跳(かんちょう)の位置。