「潮吹き崇拝」ってのは、モザイクAV文化の成熟した日本に独特の現象かなと思っていたのですが、そうでもないみたいですね。海外に目を向けてもやたら「潮吹き信仰」的な情報が多いのに驚かされます。
日本のAVは、映像作品として高いレベルをもつことで定評があります。いろいろな背景が、このAV文化の成熟に関係しているのでしょう。ひとつには映像作家がエロと非エロをあまり区別せずに作品を制作してくれること・・・例えば1970年代ににっかつロマンポルノなどが流行りましたが、欧米では大手映画会社がこのように本格的に成人映画に手を出すということは考えられないことのようです。したがって、たくさんの優れた映像製作のプロがAV作品の制作に関わってきたという歴史があります。
もうひとつ、よく指摘されているのが、日本のわいせつ画像に対する厳しい規制。性器の描写は御法度です。なので、なんとか視聴者のイマジネーションを刺激できないかと、あれこれ独特の表現技法が生み出されてきたわけです。「ブッカケ」「顔射」なんて、「Bukkake」「Gansya」と英語になってしまっていますからね(なので、欧米では「私、ぶっかけ丼が食べたい」なんて言わないこと)。
「潮吹き」もモザイクAV文化から生み出された表現手法の1つ。女性がイクと同時に、モザイクにぼやけたオマンコ付近から勢いよく潮が噴き出されます。観ている男性も思わず興奮して手の運動を激しくして、ピュッ、ピュッと射精してしまいます。はい。
とにかくAVの潮吹きは派手でして、「これはどう考えてもシッコだろう」と分かっていても、それでも興奮してしまうのですよね。まあこれが「思わずその気にさせる」日本AV作品のすごいところなのです。
潮吹き女優として人気を博した紅音ほたるさんのwebマガジンAMでのインタビューがありますので引用してみましょう。
「AVでの派手な潮吹きと普通のセックスのときに自然に出ちゃう潮吹きとは全然別のものですよ。私がAVの撮影で潮を吹く場合は、多いときで1日に12リットルの水分を飲んでましたから。」「でもあれはパフォーマンスなんで、男子は絶対に自分の彼女に求めたりしちゃダメですよ。」
おもしろいことに、AV関係者には「潮吹き」というのはあまり人気がないのです。AV男優の生活を描いた水野スミレの『「AV男優」という職業 セックス・サイボーグたちの真実』を見てみましょう。何人かの男優が「潮吹き」について語っています。まずは潮を噴かせる達人として有名な加藤鷹の言葉。
加藤鷹「ムリヤリ女の子に潮吹かせようとしている人がいるとしたら、痛々しいよ。そんなことして吹かせるくらいなら、しないほうがいいと思う」
その他の男優の意見も似ています。
栗原良「あんまり流行らせるものじゃないよね。だって、そんなことやったって気持ちいいんですかね。」
田淵正浩「男って女より弱いじゃないですか。(潮吹かせて)女をオモチャ扱いにすることで自分を納得させて、喜んでいる。」
平本一穂「潮吹きはあんまり推奨したくんだいですよね。手マンとかも、乱暴にやるやつも多いんでしょうね。」
「潮吹き」を推奨しないのは、何もAV関係者だけでなく、いわゆる性の達人といわれる人達(アダム徳永とか)も誰ひとりとして「潮吹き」に重点を置いていません。「潮吹き」こそ女性を悦ばせる最高のテクニック、とか謳っている人がいると、ちょっと怪しいと思ってもよいかもしれません。
気持ち良くなる過程で、「結果として潮を吹いてしまう」というのはありです。でも、潮を吹く・吹かないは、かなり体質に依存するところがあるので、「結果として潮を吹いていない」といっても、それが何か未到達の状態だと勘違いする必要は全然ありません。ようするに「吹こうが吹こまいが、気持ち良ければそれでOK」なのです。
「潮を吹くことを目的としてはいけません」。これは、ちょっとまじめに性感開発を考えている人達のサイトには必ず書いていることです。いいですか、繰り返しますよ、「潮を吹くことを目的としてはいけません」。
もちろん 「潮吹き」がたまらなく気持ち良いと感じる女性も中にはいるでしょう。気持ち良いと感じる女性は、どんどん吹いてかまいません。でも、一部の女性です。
気持ち良いかどうか分からない女性に対して、潮を吹かせようと激しくGスポットをグリグリこするのは禁忌です。潮は吹くかもしれませんが、深いオルガズムとは全く関係ありません。
もし、貴女のパートナーが貴女のGスポットをグリグリ力まかせにこすって、強引に潮を吹かせ、「どうだ、オレのテクニックは」とドヤ顔をしているなら、徹底的に教育するか、捨てるかしましょう。
ネットには「潮吹かせテクニック」みたいなのが氾濫していて、「吹きたい女性」「吹かせたい男性」をどんどん量産しているという困った状況です。間違った方向に進んでいます。
で、この現象、モザイクAV文化をもつ日本独特の現象かなと思いきや、欧米のネットも「Gスポット刺激による女性の射精誘導」関連に満ち溢れているのです。
さすがに英語圏では「潮吹き」という表現は使わないようですが、代わりに「女性の射精(Female ejaculation)」という言葉が氾濫しています。
日本と同じように、いや日本以上に「Gスポット刺激法」や「Gスポット鍛錬講座」みたいなのがあり、驚いてしまいます。
「Gスポット大戦」でも書きましたように、1981年に「Gスポット刺激による女性の射精現象」に関する学術論文が発表され、翌年には米国でGスポットブームが起こっていますので、歴史が長いのですよね。女性の性開放というフェミニズム的な運動とも連動していて、ちょっと複雑なのですが、とにかく「女性はGスポットを鍛えるべきだ!」的なムードが今でも欧米に続いていて、不思議です。ひょっとすると、欧米人は、日本人と違って「潮吹き」で深く逝ってしまう女性が多いのかな?
これに比べて、日本で多い「ポルチオ開発」に関するサイトは、海外にはそれほど多くないのです(海外ではポルチオではなく、Aスポットとか呼ばれています)。これも、ひょっとすると、日本の女性には膣の奥で感じることのできる女性が多いことを示しているのかしら、と思ってしまいます。
まあ、海外の方のことはともかく、みなさんは、あまり「潮吹き」神話に惑わされることなく、自分にあった性感スポットを見つけ出し、それを育てていきましょう。
最後に、1975年の歌謡曲で、元祖潮吹き女優こと窪園千枝子女史が歌っていた「しおふき小唄」で癒しのひとときを・・
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