「縛りはもはやアート。肉体の美しさを引き出す、ロープによる創作なのです。ポルノと一緒にしないでください」

と、緊縛(縛り)に崇高な芸術性を求める人もいれば

「縛りはしょせん縛り。単なるスケベ遊び。芸術家気取りしてる奴は理解できん!」

なんて、人もたくさんいます。

 

まあ、同じ緊縛といっても、いろいろあるわけでして、例えば下の写真。

緊縛の「技」を感じさせ、美しく、アート作品ともいえる縛りの写真です。

こういう作品を観て、不潔だ、女性虐待だ、吐き気がしそうだと感じる人はあまりいないかと思います。

 

では、次の写真はどうでしょうか。

いわゆる、乳首縛りで、乳首弄りの大好きなサロンさんなんか、1枚目の写真を観ても「あー、キレイですねぇ」で終わっちゃいますが、こちらの写真を観ると、心臓パコパコして、「おー、なんと美しい!これぞゲイジュツ!」なんて叫びたくなってしまいます。

でも、まあ、多くの人は、顔をしかめて「卑猥」「猥褻」「ポルノ」「下品」「不潔」と受け付けないのでないでしょうか?

(Salon de SMのHPを時々覗いている女性なんかは、「私もやって欲しい〜」「いいかも〜」、あるいは「痛そう〜」「無理〜」といった肯定的な受け取り方をされる方が多いでしょうが)。

個人的には芸術的な写真だと思いますが、これが写真展に出展されたり、本屋の芸術コーナーに並ぶのは、なかなかないのではと思いますので、アートではないのかもしれません。

 

では、こちらの写真は?

 

 

 

三大縄神様の一人、濡木痴夢男の縛りですけど、芸術性を感じますか?

サロンさんなんかは、乳首縛りの写真でも芸術的な美しさを感じるので、これなんか当然「アート」だと思うし、同時にメチャクチャエロイとも思います。

 

海外で日本の緊縛が大変なブームであることをしばしば書いていますが、これら海外のKINBAKU愛好家が口を揃えて主張するのが

「日本の緊縛はアートである」と。

「KINBAKUは芸術で、西欧の縛りは単なるポルノ。一緒にしてはいけない」

なんてまで言い切る人もいます。

 

「ポルノ」の定義が、サロンさんにはいまいちよく分かりません。

「劣情を引き出す作品・行為」だと定義しても、今度は「劣情」の意味が分からん。

まあ「チンポが熱くなる度合い」を「ポルノ度」と定義して、10点で評価すると、1枚目の写真は「1点」、2枚目は「7点」、3枚目は「9点」ぐらいでしょうか。

「アート度」となると、それぞれ「3点」「5点」「9点」ぐらいといいたいところですが、3枚目は、アート性も高く、ポルノ性も高いということになり、欧米人は納得しないでしょう。

 

そもそも、オマンコ眺めてるだけでも「あ〜、美しい〜」と感じてしまうので、エロとアートの区別が、よく分かんないんです。

 

ところで、「アート」って言葉は、ラテン語の「アルス」に起源を持ち「自然(ネーチャー)」に対する「人間の技」っていう意味の言葉だそうです。

少し解釈をいれるなら、「自然も美しい」し「人間が作り出したものも美しい」ってことなんでしょう。

 

肉体が美しいのは「自然(ネーチャー)」の美しさ。そこに縄をかけて人工的(Artificial)な美しさを引き出す技術(Art)が緊縛だとすると、緊縛はアートなのかもしれません。アートの和訳の「藝術」も「芸」と「技」に分解すると、確かに緊縛は「芸」事で「技」なので、ぴったりするような感じがしてきます。

 

さて、ここまでは前フリで、本題はここから。

 

今回は、上で述べたように、特に欧米では、「緊縛はアートで〜す」って感じで、ことさらアート性を強調するあまり、いろいろトラブルも起こっているという話。

「ポルノやエロはいやだけど、アートならOKよ」って女性も多いと思います。

「キレイに縛って、キレイな写真撮ってください!」と。

 

それはそれで間違ったことではなく、全然問題ないのですが、

「アートだと言ってたからOKしたのに、卑猥なことされた!」

「縛られて、性的な暴力を受けた」

といったトラブルが、欧米の緊縛シーンで問題になっているようです。

 

これは、『SM美容術入門37-確実安全言語同意』でも話題にした、プレイに先立つ「コンセント(同意)取得」にもからんでくるのですが、契約を重んじる欧米の文化では、同意から逸脱した行為があった場合には、即座にアウトになります。

既に何人かの日本式緊縛を愛好する欧米の緊縛師が、同意のないエロ行為をおこなったために、ソサエティから締め出しをくらったり、裁判ざたになっているようです。

「いや、指入れもアートなんです〜」「日本の三大縄神様もビデオではこんなことやってま〜す」ってのは、「アート」と「ポルノ」を区別したがる欧米では全く通用しないでしょう。もちろん、エロに寛容な日本においても、十分な注意が必要です。

 

ポイントは、SMがどのようなものかに対するイメージは人それぞれで、あなたが考えているSMのイメージと、相手が考えているSMのイメージが、かなり違っている可能性は十分高い、ということです。

ですので、始めてプレイする時には、十分にお互いお話し合いをして、どのようなプレイをしていくのかにおいての同意を十分に得てから進めるようにしましょう。特に、「アートだからね」で安心させて釣って、エッチなことをしようとするのは、完全アウトです。

 

【Take-home message-64】受け手と縛り手の「アート」に対する齟齬があるとトラブルが生じます。

 

アート系の縛りの撮影現場。プライベートで楽しむ緊縛とは全く違う世界です。

 

そもそもポルノ系のSMの動画をYouTubeから見つけるのは難しいのですが、これは有名なSM作品メーカーの撮影現場。これもやはり、プライベートで楽しむ緊縛とは全く違う世界です。

 

SM美容術入門37-確実安全言語同意 < SM美容術入門 > SM美容術入門39−SなMとMのS

 

連載『SM美容術入門』