「縄」は「手段」です。「ツール」にしかすぎません。

 

 

 

 

亀甲縛りにするとパートナーが発情するとか、合掌後手縛りにすると、彼女が愛奴になってくれるとか、緊縛の形そのものに不思議な力があるわけではありません。

そもそも「なんで緊縛なんてするの?」って友達に聞かれたらどう答えます?

「普通にセックスするだけでは、面白くないの?」って聞かれたら?

 

「なんか分からないけど、縛ってたら楽しいからかな」。

ですよね。

満足感があるから、わざわざ汗流しなら縛るんですよね。

どうして楽しくて、満足感があるのか、言葉にしようとすると、難しいです。

でも、緊縛の魅力に取り憑かれた人は、その楽しさを、言葉にはできなくても、身をもって(カラダで)納得しているわけです。

特に言葉に出して説明しなくても、「体」と「魂(こころ)」で分かっています。

 

緊縛では、「セックスなくても、別にいいや。」

といった不思議な満足感・充足感を味わうことができます。

映画や芝居やコンサートが終わったあとの、あの満足感と似ているかもしれません。

あるいは、人によっては、小説を読み終えた後や、深〜い夢を見た後の不思議な充足感と似ているかも。 

そういった不思議な感覚の虜になってしまうんです。

 

縛られると「脳内麻薬(ドーパミン)が出てどうのこうの」って、よく言われますが、

音楽、映画、芝居、小説などなど・・魂に直接響く営みは、不思議な心の充足感や満足感を与えてくれます。

ヨガや座禅、マラソンなんかも同じような、魂への響きを与えてくれるのかもしれません。

 

 

 

「縄遊び」ってのは、縛り手と受け手が、縄を介してイメージの世界で遊ぶことなんです。

想像だけでなく、実際に縄で体に刺激を与えるので、ものすごくリアリティーがあります。

というか、リアルに縛られているわけですからね。

あとは、どうその臨場世界を広めていくか、強めていくか。

それは、主には縛り手のあなたが主導権を握ってリードしていかなければなりません。

もちろん、受け手もフィードバックしないと、臨場世界は深まりません。

臨場感の強い仮想空間を、2人で作り出して行くわけです。

難しいことを言っているようにも聞こえますが、ようするに2人でお芝居をする、つまり「プレイ」するんです。

 

芝居するって、真剣に縛ってるんだ。縛ってるフリじゃないよ

そういう意味ではないんです。

だって、演劇だって、映画だって、基本的にはウソの世界です。

でも、われわれは芝居や映画を観て、涙を流したり、死ぬほど笑ったり、魂を揺さぶられたり、人生観を変えたりします。

心の臨場世界は、それほど力をもった世界なのです。

 

 

 

雪村春樹は「(縛りは)恋愛劇」って言ってますが、まさに即興演劇なんです。

SM美容術入門02-セッションを楽しむ 』では、女王様系の人達は、SM遊びを「セッション」と呼ぶと言いましたよね。

そして、これはジャズなどの音楽演奏での「セッション」とつながるところが多いと説明しましたよね。

ジャズの即興演奏も、筋があるよで、ないよで・・・即興劇と同じ。

プレイヤーの気持ちが同調すると、どんどんととてつもない深い世界が構築されていきます。

いかに受け手の心と一体となり、2人の臨場空間、仮想世界を形成していくか・・・

大切なのは、縛ることではありません。縛る行為を通して創っていく、パートナーとの心の世界なのです。

 

【Take-home message-41】縛ることは目的にはなりません。縛りを通じて、パートナーとの深い臨場空間を形成することが大切です。

 

 

どうやって、縛る事で臨場空間を作っていくか。

次回は、縄で導く情動の動きについて説明していきましょう。 

 

 

マイルス・デイビス、ハービー・ハンコック、ロン・カーター、ウェイン・ショーターによる1967年のセッション。テンション凄すぎます。 

 

限られた空間と動きから、広くて深〜い臨場空間を作り出す『能』。「脳」の働きで時間と空間を越えた世界を体験させてくれます。

 

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連載『SM美容術入門』