「催眠術って怪しいけど、 もしインチキでないなら、私も一度かけてみたいな。どうやってかけるの?」
ええ、比較的簡単ですよ。緊縛より簡単かも。かけてみてください。
『メスマー美容術入門10-催眠術を学ぶ』で紹介しましたように、現在、たくさんの催眠術入門書や催眠のかけ方DVDが出回っています。
いろんな流派がありますが、いわゆる「プロ催眠術師」と名乗っている人達は、基本的には古典催眠の使い手が多いです。
古典催眠の対極にあるのが、臨床催眠やエリクソン催眠ですが、これらの入門書は、あまり目立たないし、値段も高いので今回はおいておきます。「3つ数えると、眠たくなる〜」っていう、古典催眠の手法についてのお話しです。
これまで何回も繰り返し述べていますように、「催眠状態とは何か?」「トランスとは何か?」「無意識とは何か?」といった、催眠に関連する大事な言葉に関して、統一的な定義があいまいです。流派や人により、それぞれ独特の定義をもちますので、議論になると、話が噛み合わなくなります。
しっかりと定義できない、というのは、ようするに良くわかっていないのです。
分かっていないと言っても、「無意識」なんて、まあ99%以上の人は、「確かに無意識はあるよね」と同意すると思います。でも、どうやって定量化するか難しいんです。
同じように、「催眠状態」ってのも多くの人はその存在を認めますが、どうやって定義や定量化するか難しいんです。
例えば、催眠術師が、被験者を眠ったような状態にして、「あなたは目が覚めると、隣に座っているAさんが見えなくなる〜」って暗示かけて、「はい、起きて」と目を覚ますと、ごくごく普通の状態に見えるのですが、なぜか被験者はAさんが見えないと言います。
ここで、眠っているような状態と、起きているけどAさんが見えない状態のどちらも「催眠状態」と定義するのか、前者と後者を別の状態で定義するか、なんてのは、学派や流派や人によって異なります。
催眠術のかけ方、つまり催眠状態への誘導法も、学派や流派や人によって大きく異なり、いろいろあるので、勉強し始めは混乱してしまうかもしれません。
「指先をじっと見て!目をそらさない!意識をこの指先に集中して!」
と、意識を集中させるのが大切です、というのがあると思えば
「右の天井見て。左下の床を見て。正面上のランプを見て・・・」
と意識をあちこちに動かして混乱させるのがよいです、というのもあり、
「そりゃ、どちらも表面意識を疲労させているんだよ」という解釈もあれば、
「どちらも、術者の指示に従うというパターンを覚えさせているんだよ」
という言い方もあります。
いろいろな方法があるので、「どれが本当だろう?」と最初は迷うかもしれませが、
「どれも本当」と思って、たくさん技法を覚えるのがよいです。
被験者により、どの方法で催眠状態に入りやすいかが全然異なります。
なので、プロの催眠術師は、あれやこれやを試しながら、「これだな」という入り口を見つけて、催眠誘導に入っていきます。
ちょうど、SM美容において、エネマ美容術でトランスに入る人もいれば、ボンデージ美容術で入る人もいれば、スパンキング美容術でしか入らない人もいる、ってのと同じで、人によって得意な感覚のモードがあるんです。
なので、いろいろ導入方法のネタをマスターしておき、様子をみながら最適のものを使っていきます。
持ち駒が少ないと、少ないテクニックでうまく進まないときに、そこで終わってしまいます。
あれこれ引き出しがたくさんあると、その人、その場所、その時にあった誘導法を見つけることができます。
あと、もう一つ大切なポイント。それは「相手をしっかり観察すること」です。
こちらが「しかけ」て、相手の反応をしっかりと受け止め、それに合わせて「次をしかける」といった円環的な相互作用から、催眠状態に入っていきます。
これもまたSM美容術の基本でもありますし、ようするに、人と人のコミュニケーションの基本であります。
催眠術は、催眠術師が被験者に一方向的にかけるものだという考えもありますが、サロンさんは、これとは別の「催眠状態は、かける側とかかかる側が、お互いに影響しながら、共に催眠状態に入っていく」という考え方の流派に共感を覚えます。
またまた、SM美容と同じで、良い受け手さんは、どんどん責め手をリードして深い状態に連れて行ってくれます。
ただ、リードは、催眠術師、責め手が多く取りますので、プレイの全責任は、催眠術師、責め手がとらなければならいいのは『SM美容術入門25-縄空間の制御者に』で解説した通りです。
「で、わかったから、どうやってかけるのか早く教えて!」
ようするに、いろいろあるから、教科書やDVD一杯見て、覚えてください、ってことになるのですが、だいたいの流れとしては
(1)信頼感を得る(ラポールを形成するとか言われることが多いです):ようするに、「この人となら、ちょっと遊んでも面白いかな」、という信頼関係を確立します。
(2)好奇心を惹きつける:催眠に全く興味がない人はかからないかもしれません。「少しは興味あるけど、私、絶対かからないと思う」ってのはOKです。
(3)あれやこれやネタを使って催眠誘導し、「え、これってもしかして、私、かかったの?」というシグナルを感じ取れれば、そこから、ガンガン深い状態に誘導してきます。
明治時代から、いろんな人がいろんな方法を考えてきたので、ホント、いろんな手法がわんさかあります。いくつかを例として書いていきますと、
- 呼吸法を使いながら弛緩させていく
- メトロノームなどの単調な音のリズムに意識を集中させる
- 指先やペンライトなどの1点に意識を集中させる
- 急に関係のないことを言って軽い混乱を起こさせる
- 術者の指先に意識を集中させて、指を動かして眼球を強制的に動かす
- 瞼を閉じたり開けたりをゆっくり繰り返させ、瞼の筋肉を疲れさせる。
- 肩をもってゆらゆらと揺らす。
- あっち見て、次にそっち見て、と部屋のあちこちに視点を移動させる。
- 振り子をゆらしながら、振り子の先の5円玉などを目で追わす。
- ぎゅっと抱きしめる。
- じっと目を見つめる。
- タイミングよく、相手の腕を引き寄せる。
- 口を塞ぐ。
- 目を閉じて、腕が上に上がったり、下に下がったりをイメージさせる、実際に腕が移動したら、その事実を認識させる。
その他いろいろあります。具体的なかけ方は、教科書やDVDで学んでください。
ということで、結局、「なんだ、全然、かけ方教えてないやん!」ってことになりましたが、上の基本を意識しながら、教科書やDVDで学べば、古典的催眠は、それほど難しくなくかけれるようになります。
いわゆるショー催眠系の催眠術師、十文字幻斎による古典催眠手法の催眠誘導。丁寧、かつ慎重に催眠初体験(?)の被験者に催眠をかけています。
古典催眠と正反対にあるエリクソン催眠の一例。もはや催眠なのかどうか、普通の人には分かりませんが、たくみにトランス状態に誘導しています。
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