受け手にイメージを膨らませる余裕を与える「緩い」縛りから始める事で、深くて広大な臨場空間を形成することができます。
人間の知覚というのは面白くて、足りない情報はどんどん、脳ミソにたまっている過去の記憶などをうまく補填しながら、リアリティーあるイメージを作ることができます。省エネタイプ、あるいは、ズボラタイプの認識方式なんです。
といいますか、「情報が足りない」なんて状況でなくても、普段、観たり、聴いたり、味わったりしている時も、実は、目や耳や下からライブで入る感覚情報は、そのごく一部しか使われておらず、ほとんどが、過去の記憶などから補填されているのだ、ってお話しもあります。
この知覚の特性から導き出せる大切なチップが、
【Take-home message-50】情報量を制限することで縄の臨場空間を膨らませる。
となります。
上の2枚の絵を観てください。
どちらもSM絵ですが、随分と感じは違いますよね。
どちらが優れた絵であるかを考えて欲しいわけではないです(どちらも良い絵だと思いますよ)。
情報量の違いという意味では、左の絵の方が圧倒的に少ないですよね。
左の絵だと、これからSMプレイが始まるのか、ここで終わったのか分からないです・・・
多分、これから始まるんでしょうが、これからどうなるのか。右の絵のようになっちゃうのか、女性が縄をふりほどいて、逃げ出すのか。。他に男がたくさん入ってきて輪姦されるのか。。
そもそも、この女性、縛り手の彼女なのか、お客と遊女という関係なのか・・・・
いろいろ妄想が膨らんじゃいます。
これに対して、右の絵の方は、比較的情報量が多いです。
まあ、責められてるのが、奥さんなのか、 メイドカフェで知り合った子なのかは、いろいろ妄想してしまいますが、プレイとしてはかなりクライマックスに近い段階で、ガチガチに縛られて、身動きができず、オマンコやアナルにもいろいろ入れられて、イマラチオまでされているようで、大変な状態です。でも、まあ、終わりに近い、いわゆるクライマックスのステージでしょう。サロンさんのイメージ力では、その程度しか思いつきません。
『SM美容術入門3-ダイナミックレンジ』で書きましたように、「強い刺激が先に入ると、繊細なシグナルを感じ取る能力がしばらく麻痺してしまう」のが生物の特性です。
最初に右の絵ののような、情報量が多く、しかも刺激の強い情報が入ってしまうと、臨場空間が膨らまないんです。
SM美容のアイテムの組み立ての場合も、刺激の強いアイテムは後ろにもってこないといけないと説明しましたよね。
最初は、なるべく繊細な刺激で、それ故に、足りない部分を、受け手が脳で補足するような余裕をもたせることが大切です。
そうすることにより、縄の臨場空間は、どんどん大きくなり、とても深くて味わいのある縄遊戯を楽しむことができます。
「緩い縛り」と「弱い刺激」とは異なる尺度をもつ考え方なのですが、ここではあえて区別をしないで解説しています。のちのち、詳しく説明する機会もあるかと思います。
もう少し、わかりやすく具体的に説明すると、
「よし、今日はナニナニちゃんを、ガチガチの後手縛りにして、腿縛りで股をひろげさせて、バイブをオマンコとアナルに突っ込んで、チンポでお口を犯してやる!」と、そのゴールにむかって、汗を流しながら縄をかけても、思っているようにはならないです・・ほぼ。
相手との縄によるコミュニケーションを取りながら、プレイの方向が決まっていくのが正しい姿。
なので、同じ相手と遊んでいても、日によっては、右の絵のようなクライマックスになるかもしれませんし、別の日には、全然違った形でクライマックスを迎えるかもしれません。
受け手に、いろいろとイメージを膨らませる余裕を与える「緩い」縛りから始める事で、深くて広大な臨場空間を形成することができるのです。
観ることを徹底的に制限することでイメージを膨らませる寺山修司の演劇「盲人書簡」。
最初から最後まで画面全体が青色だけのデレク・ジャーマンの遺作「Blue」(音楽:サイモン・フィッシャー・ターナー)。音楽と言葉だけで、映像イメージが頭の中に膨らみます。
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