目標は縛ることではありません。心を深いところでコネクトすることです。
さて、今日のお話は「SM美容」の核心部分の説明です。正確には、「SM美容」というか、「SM遊び」あるいは「緊縛遊び」の核心。
まあ、全ての「SM」や「緊縛」の楽しみ方が、これでないといけないというわけではないので、「平成時代の緊縛の楽しみ方」「大人のSMの楽しみ方」って感じで、気楽に読んでください。
おそらく、1回読んでもピンとこない人の方が多いかもしれませんが、この後の『SM美容術入門』のコラムでも、繰り返し同じようなことを説明しますので、今回わからなくても、気にしないでください。もちろん、「そんなこと、当たり前。ずっと前から知ってるわい」って方は、お読みになる必要はございません。
『SM美容術入門22-縄で創る臨場空間』では、「縛ることは手段であって目的ではない」と解説しました。
これ大切です。
菱縄縛りや、後手合掌縛りなど、難しい縛りがキレイにできるようになると嬉しいものですが、それを目的としてはいけません。
縄仲間に自慢でき、彼女も「私の主、縄がとても上手なの〜」と喜んでくれるかもしれませんが、それだけのこと。
包丁さばきが上手いからといって、よい料理が作れるわけではありませんし、ギターの早弾きができるからといって、人を感動させる音楽が奏でられるわけではありません。
もちろん、美味しい料理を作るためには、包丁を使いこなさなければいけませんし、よい音楽を演奏するためには、楽器を弾きこなせなければなりません。同じように、よい縄遊びができるためには、縄のいろいろな技術もきちんと身につけていかなければなりません。
大切なのは、目標設定を間違えないこと。
「緊縛が上手にできること」は、「緊縛遊び」の第1目標にしてはいけません。
第1目標とするべきは、「良い縄遊び」をすることです。
「良い縄遊び」が何かというと、縛り手も、縛られ手も、プレイが終わった後に、「あ〜〜、メッチャ楽しかった。満足満足」と思えるようなプレイ。縛り手だけ、あるいは縛られ手だけがそう感じて終わるのではなく、2人ともそう思えるプレイをすることを目標とします。
『SM美容術入門19-誰のための縄か』『SM美容術入門20-アマチュア縄』で書いたように、2人で楽しむSMプレイでは、読者や観客を意識する必要なまったくありません。なので、プロの場合と違って、2人だけが楽しめれば良いので、構造は簡単です。基本的な縄のテクニックだけで、十分と深い遊びができます。
どうしたら深く楽しむことができるのか?
これは『SM美容術入門22-縄で創る臨場空間』で説明した、『縛る行為を通して、パートナーと深い臨場世界を創っていく』 なんです。
分かります?怪しげな精神論に聞こえますか?
つまるところ、SM遊びは「心の遊び」なので、どうしても説明が難しくなっちゃうのです。
SMとは関係なく、普通のセックスしていて、「スイッチ入っちゃった」「トランスに入っちゃった」って感じたことある人、少なくないですよね。
あの意識状態、いろいろな分野の人が、いろいろな説明をして、いろんな用語も使われていてややこしいのですが、なんとなく分かりますよね?
セックスでは、まだそういう状態になったことがないと言う人でも、お笑いのTV見てて、笑いが止まらなくなって息もできなくなっちゃったとか、突然の地震にびっくりして、記憶吹っ飛んでるのに、気がついたら何故かいつも通り、職場から家まで戻っていた、なんてありますよね。これなんかも似たような感じ。さらに言うなら、恋しているフワフワの時や、映画や芝居の世界にどっぷり浸かっているときも、似たような心の状態。
「変性意識状態」や「トランス」とか、いろんな名称がついており、いろんな人がいろんな機構のモデルを出していて、しかもいろんな「トランス状態」がたくさんあるので、ややこしいことこの上ないのですが、体験としては、誰でもいろんな種類、いろんな深さの「トランス状態」を経験しています。われわれの外部世界の認識機構が、特定の刺激だけをフィルターを通して処理するので、かならず「変性意識状態」は、常時といってよい程、あたり前に起こっています。
『縛る行為を通して、パートナーと深い臨場世界を創っていく』ってのは、乱暴にいうと、縄で「深い」トランス状態を作っていくことです。
繰り返しますが、「トランス状態」ってのは、「変性意識状態」と同じ意味、あるいは「深い変性意識状態」で、「無数の種類」があります。
エッチな「トランス状態」に限っても、「チンポでガンガン突く」ことや、「イラマチオでグイグイ責める」「クンニでペロペロ舐める」なんてことでも達成可能なのでしょうが、縄遊びでは、これを縄で誘導します。縄から少し広げて「SM」とすると、スパンキングや、エネマや、蝋燭などを使って誘導します。
「トランスに入る」「スイッチが入る」ってのは、どのような状態なのでしょうか?
これもいろいろな分野の人が、いろいろな説明を、いろいろな用語でしているのでややこしいです。
「表面意識の働き抑制して、深層意識(無意識)を活発にする」
「心の奥底の魂を引き出してくる」
「左脳的なスクリーニングをバイパスして、右脳的な仮想空間形成を活発にする」
「第2の自分を引き出す」
「覚醒状態になる」
「止観状態になる」
どれか、腑に落ちる説明があれば、それをイメージしてください。
感覚としては、いわゆる普段自分だと思っている意識の活動が下がって、ぼんやりするのだけれども、なぜか感覚は普段の何倍も鋭くなり、いろんなシグナルがストレートに心に突き刺さってくるような状態になることです。
雑念が消え、一点超集中の状態です。
いわゆるヨガの瞑想や座禅などでめざしている心の状態に似ているのかもしれません。
このような心の状態、自分1人で達成しようとすると大変です。
ただし、誰か他の人が誘導してくれると、比較的簡単に達成できます。催眠術でも、他者催眠より自己催眠の方がはるかに難かしいと、という事実と同じです。
【Take-home message-43】縄で受け手をトランス状態に誘導するのが第1ステップ。
このようにして、「魂の剥き出し状態」に、縄でもっていくのが第1ステップです。
でも、まだ不十分。
この段階では、パートナーがトランス状態に入っているにすぎません。
「2人で」臨場世界を創っていくためには、あなたもトランス状態にはいらなければなりません。
上にも述べたように、自分自身を「トランス状態」「瞑想状態」にもっていくのは、なかなか難しいです。
それができる人は、わざわざこのようなブログなんか読んでないでしょう。
大方の人は、自分で自分をトランスに持っていくのは至難の業。ようするに、「雑念を捨て、精神を統一せよ」ってやつですからね。雑念をてるのは、大変です。
でも、心配無用。
意識しないでも、パートナーの深いトランス状態が、自然とあなたをトランス状態に誘導してくれます。
パートナーをトランス状態に誘導すること集中していると、自然と自分もパートナーによりトランス状態に導かれます。
「縛り手は受け手が育てる」としばしば言われるように、縛り手と受け手は対等の関係、あるいは受け手の方が上の関係にあることを忘れないでください。
【Take-home message-44】第2ステップでは自分もトランス状態に入り、臨場世界を共有。
さて、ここまでくれば、縛り手と受け手は、心の深い部分で「コネクト」されます。
でも、まだまだですよ。気を抜かないでください。
まだ、この状態では連結状態は不安定で、簡単に「素に戻」ります。
ここからどんどんと、この繋がったチャンネルを「太く」「強固」にして、同時に「広大な臨場空間」を創っていくわけです。これは『SM美容術入門23-縄で導く3つの情』で説明したような、縄による感情の誘導を利用しながら達成します。
少しでも気を抜くと、すぐに素に戻る難しいステップです。その方法については、おいおい説明していきましょう。
一旦、安定した2人の臨場空間が形成されれば、あとは安心。
思う存分イメージの世界で遊んでください。
間違いなく「あ〜〜、メッチャ楽しかった。満足満足」という縄遊びをすることができます。
【Take-home message-45】臨場世界を深めて、広げて安定化させましょう。
「え〜、こんな説明じゃ、全然どうやっていいのか分からない!」
そうですよね。わかんないですよね。
おそらく、「生(ナマ)」で一流の緊縛師のパフォーマンスを観るのが、「コネクト」するのがどういうことかを分かるのには、一番早いかも。
プロの場合は、2人だけでなく、観客も臨場世界に引きずり込んでしまいます。その場合、「ライブ」でないと臨場世界共有しにくいので、なるべくDVDとかではなく、ナマのパフォーマンスを観ましょうね。
たまたまTEDで観たモダンダンスなのですが、これなんか、3人が完全に「コネクト」された状態。即興で素晴らしい踊りを見せてくれています。驚きですね。
チック・コリアは、若手の演奏家とのデュオを好んでおこないます。経歴的には格下の相手とのお手合わせなのですが、この上原ひとみとのデュオの時のように、挑む上原が受けて立つチック・コリアをリードしてしまうこともあります。誰かとコネクトすることで、自分の可能性は予想外の広がりをみせることがあります。
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