『ウソだらけのSM美容』で少し出てきた『幸せホルモン』のオキシトシン。
出産や授乳に関係する下垂体ホルモンとして発見されたのですが、脳の中にもあるのが分かり、
「ハッピーホルモン」
「愛情ホルモン」
「抱擁ホルモン」
「幸せホルモン」
「恋愛ホルモン」
「絆ホルモン」
とかよばれたりして、良好な人間関係や多幸感に関係している分子ではないかと注目を集めています。
オキシトシンの構造。
サロンさんが、感想でよく「ホルモン大放出、で終わりました」
なんて無責任に書いてますけど、これは、このオキシトシンなどが脳内で放出されていることをイメージしています。
実際にSM美容で、この種の脳内ホルモンが放出されているかどうかは、知りません(ハッピーになることは確かです)。
日本でも、浜松医科大などののエラい先生とかが、オキシトシンを鼻からシューと噴霧して、自閉症やアスペルガー障害などの患者さんに効果があるかどうかを調べる、医師主導臨床試験というのを進めているようです。
もっともオキシトシンを出産を早める薬としては、既に医療現場で使われていますので、上のような試験は、出産や授乳以外ので、こころに働くホルモン薬としての可能性を追究する研究ということです。
まだ試験段階なので、使えるかどうかが分かるのは、まだまだ先の話です。
さて、またまた今回も国際性科学学会の学会誌、ジャーナル・オブ・セクシュアル・メディシンの面白ネタの紹介です。
今回の論文は
Althof, S., Osterloh, I.H., Muirhead, G.J., George, K., Girard, N., Jennings, W., . . . Rauzi, F. The Oxytocin Antagonist Cligosiban Fails to Prolong Intravaginal Ejaculatory Latency in Men with Lifelong Premature Ejaculation: Results of a Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Phase IIb trial (PEDRIX). J SEX MED 16, 1188-1198 (2019).
McMahon, C., Althof, S., Rosen, R., Giuliano, F., Miner, M., Osterloh, I.H., . . . Harty, B. The Oxytocin Antagonist Cligosiban Prolongs Intravaginal Ejaculatory Latency and Improves Patient-Reported Outcomes in Men with Lifelong Premature Ejaculation: Results of a Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Proof-of-Concept Trial (PEPIX). J SEX MED 16, 1178-1187 (2019). [[media:182.pdf|#182]]
の2つ。
これは何の論文かというと、オキシトシンと同じ作用をもったクスリを、早漏の治療に使えるかどうかの治験結果の報告論文。
上で紹介した、自閉症やアスペルガー障害などの患者さんに効果があるかどうかを調べるのは医師主導臨床試験でした。
医師主導臨床試験というのは、クスリの開発段階としては、まだまだ第一歩か、0.5歩かそれくらいなのです。
一方で、こちらの2報は、「治験」とよばれ、製薬会社が主導で、クスリとしての実現へ向かって、進んでいる途中のものです。
治験ってのは、フェーズ1,フェーズ2、フェーズ3のホップ、ステップ、ジャンプの3段階で進めていく、お金も、時間もかかる大変な開発なのです。
臨床試験や治験ってのは、ようするにネズミやサルを使った動物実験ではなく、人を使ったテスト。
なので、事故が起こっては絶対だめですし、また、最終的に国が「このクスリ効きます」とお墨付きを与えるわけですから、かなり厳しい審査となり、治験で落第するクスリもかなりたくさんあるらしいです。
で、この2つの論文、イギリスの製薬会社が作った「クリゴシバン(Cligosiban)」というオキシトシンと同じ作用をもったクスリの、早漏治療に使えるかの、フェイズ2の治験の結果を報告しています。
2つ論文がありますが、それぞれ違う病院で、微妙に違った方法で試験しています。どちらも「マンコにチンポを入れている状態で、何秒立った状態でいれるか」で評価します。
これって、ストップウォッチもって、セックスするのですかね?
かなりプレッシャーですよね、これ。
で、面白い、といったら失礼かもしれませんが、興味深いのがこの2つのグループが正反対の結果だしていること。
一方が「効果なし」の結論で、もう一方が「改善した」という効果ありの結論が出ています。
製薬会社は、ここであきらめて失敗の損失を最低限にするか、あるいはさらにお金をつぎ込み、結着つけるための治験をおこなうかなのでしょうが、クスリの開発って、大変ですね。
「オキシトシンはハッピーホルモン〜」とか、ハッピーに言うのは簡単ですが、いざクスリにしようとすると、大変な道のりであるのが分かります。
でも、ハッピーに薬事承認されれば、みんな早漏でなくても、うまいことやって(お医者さんがうまいこと診断書書いてくれて)たくさん使うでしょうから、製薬会社にとっては、ほんと幸せホルモンですね。
オキシトシンが脳内に増えた状態から、急に減ると、「騙された!」てなことになります。
『ジスイズ・オルガズム美容術』