縄で作る臨場感の強いイメージ空間を共有できたら、次に縛り手が受け手をリードして、臨場感を深めていきます。

 

 

 

前回の「SM美容術入門24-縄で心をコネクト」では、「縄で受け手をトランス状態に誘導し」「受け手のトランス状態に誘導されながら自分もトランス状態に入り(自分からトランス状態に入れる人はもちろんそれでもOK)」、次に「臨場感の強いイメージ空間を共有して」、あとは「楽しく縄遊び」というステップを紹介しました。

 「臨場感の強いイメージ空間を共有」って、何だか分かったようなわからないような言葉ですが、ようするに「二人して意識を集中して縄の世界で遊ぶ」ってことなんです。「夢中になる」こと。

あたりまえのことを言ってますけど、「夢中になる」には遊びの基本ですよね。

 

「箱庭療法」って聞いたことありますか?

これは「遊戯療法」の1つで、「遊びながらセラピー」しようというものです。

 

 

どういうものかと言えば、「砂箱」の中に、自由気ままに何か風景を作ってみて、という遊びです。

57センチ x 72センチ大の長方形の箱の中に、山を作ったり、池をつくったりして、家をおいたり、船を浮かべたり、ゴリラをおいたり、怪獣をおいたり、いろいろ好きなオモチャを並べて、自分のイメージ世界を作ってみてね、という遊びです。

もともと、自分の心の中を、うまく言語的に表現する能力がない子供のためのセラピーとして始まったものですが、次第に大人も対象となります。複雑な心の中を表現するには、言語よりも、こういった作業の方が、より抽象度の高い表現ができるからです。

臨床心理学者は、クライエントが創作した箱庭作品を見ると、クライエントの心の中の状態を知ることができるのですが、それが目的ではありません。心の中を分析するだけでは、診断であって、セラピーではありません。

セラピストがおこなうのは、分析ではなく、クライエントと共に、イメージ世界を共有することです。

クライエントの創る空間の中に入り込み、それを味わいます。牧草を食べる牛を感じたり、自由に走り回る馬を感じたり、クライエントと一緒にその世界で遊びます。

すると、なぜか、2人ともハッピーになれるわけです。

「遊び」「プレイ」のパワーですね。

河合隼雄などは、「クライエント共にいるだけでいい。共感できれば、何も喋らなくてすらよい」てな感じのことをよく言っていました。

まさに、「臨場空間の共有」です。

別に、緊縛はセラピー目的でおこなうわけではありませんが、「なんで縄遊びは楽しいのか?」の、答えがここにあると思います。「遊び」のもつ不思議な癒しの力に惹かれているのでしょう。

 

【Take-home message-46】臨場空間の共有で心は癒されます。

 

さてさて、「イメージ空間をあなたとパートナーで共有できた」とします。

いちおう、SMプレイですので、「主従関係」「トップとボトム」「縛り手と受け手」「SとM」の関係が生じてきます。ようするに、どちらが「空間の支配権を握るか」「主導権を握るか」です。

もちろん、生じなくてもよいのですよ。 あくまで「対等な関係」で、あなたとパートナーとの主従関係が、時間と共に入れ代わる、ってのもありです。いまS役やっていたのに、すぐ後にはM役になる、って感じの遊びです。

 

これはこれで面白いと思いますし、そういうプレイを楽しんでいる方もいますが、でも、かなり高度な遊びですよね。難しいです。特に、縄を遣う場合は。

やはり、一般的はどちらかが「リードを握る」方がやりやすいです。つまり「イメージ空間の支配権を握る」わけです。

支配権の握り方。つまりリードの仕方が強い場合には、「絶対的な主と奴隷」のような厳しい関係にもなりますし、あるいは、やんわりと支配して、かなりの程度、受け手を自由に遊ばせるような関係もあります。 

ここらへんは、あくまで好みです。

プレイをする2人の好みですので、受け手が「やんわりとした支配」が好きなのに、縛り手が「完全な主従関係」を求めると、受け手に逃げられるでしょうし、逆に受け手が「完全な主従関係」を求めているのに、縛り手が「やんわりとした支配」を好む場合にも、受け手は物足りなさを感じ、縛り手は「ディープすぎるわ」なんて引いたりします。

ここらへんは、うまく調整するなり、相手を見つけ直すなりしないといけません。

ただし、「支配」といっても、あくまで「リードする」に過ぎずませんよ。

リードする側(S、トップ、縛り手、ご主人様)が別に、される側(M、ボトム、受け手、召使い)より偉いわけではありません。

偉いフリをして遊ぶのはアリですけどね。

でも大切なのは、「偉いフリをする」ことではなく、「うまくリードする」ことです。

 

【Take-home message-47】縛り手は臨場空間の中で、受け手をうまくリードしなければなりません。

 

 

お互いが完全に対等になってしまうと、なかなかスムーズにイメージ空間を膨らますことができません。ダンスなどの場合も、おおかたは、どちらかがリード役となることにより、共有した臨場空間を見事に深めることができます。「やんわりとした支配」の好例でしょう。

そもそも武道とは、命をかけた臨場空間の支配権の奪い合い。臨場空間を完全に支配することができれば、体が触れあう前に勝負は決まってしまいます。「完全な主従関係」のケースです。

 

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連載『SM美容術入門』