クリションマンの正体

「クリションマン」ってのは、『クリ至上主義』が生み出した幻の生き物だったのでしょうか?あるいは、本当に幸せを呼ぶ未知の世界からの使者なのでしょうか?

 

 

 

さてさて『クリションマンの野望:序章』『クリションマンの故郷』『暴れん坊クリションマン』と続いてきた『クリションマン』シリーズもいよいよ最終回。

クリションマン』とは何者か?簡単に言えば『Gスポット』の新しい名称。

オマンコの入り口付近の上側、つまりGスポットには、確かに性感スポットがあるらしいけど、特に『Gスポット』と呼ぶに値する独立した「器官」や「組織」は、見当たりません。オマンコの入り口付近の上側は、「」「尿道」「クリトリス(体の中の部分)」が隣り合わせにぎゅうぎゅうと詰まって存在する場所なので、いっそこの領域を『陰核尿道膣複合体』=『クリトウレスロヴァギナル複合体』=『clitourethrovaginal complex』、略して『CUV』あるいは『クリションマン』と呼びましょう、というのがローマ大学のジャニーニ医師らの提案です(1)(最後の『クリションマン』はサロンさんの提案ですが・・)。

ジャニーニ医師は、超音波エコー観察がお得意のようで、チンポの挿入に伴う、」「尿道」「クリトリス(体の中の部分)」の動きをリアルタイムに観察しています(2)。同じようなリアルタイムの動きの観察はMRIと呼ばれる診断装置でも可能で、昔ながらの解剖や組織の顕微鏡観察とはまた別の、新し世界が見えてきます。静的で、しかも多くの場合は死体の解剖から得られる古典的な観察からは見えない、」「尿道」「クリトリス(体の中の部分)」の連動した動きが、新しい観察法では見えて、そこから新しい機能単位が定義できるのだ、というのがジャニーニ医師陰核尿道膣複合体』の提案の妥当性の根拠とする点です(暴れん坊クリションマン』参照)

ジャニーニ医師はこの 陰核尿道膣複合体』に近い、というかほぼ同じの『clitoris-urethrovaginal complex』という表現を2008年に既に使っています(3)。『clitoris-』の部分が『clito』に変わっただけですね。ちなみに、この論文は「尿道部分の厚さ」と「オルガズムに達しやすいか」との関係を調べたものです。厚い女性はイキやすく、薄い女性はイキにくいという結論です。サロンさんのこの論文は評価しませんね。結論を出すには、サンプル数が少なすぎます。こういういいかげんな論文をベースに、美容整形外科は、「逝ける体にするための膣整形」とかでオマンコ切り貼りしたりするんです。

まあ、それはさておき、この論文では、ジャニーニ医師『clitoris-urethrovaginal complex』=Gスポット』として使っています。もちろん根拠が薄い関連づけで、当然のごとく、例えばイタリアのピュッポという内科医から、非科学的だと非難されています(4)。

話は逸れますが、このピュッポ医師の書いた総説(4)がまた強烈で、タイトルが『クリトリスの解剖学:ヘレン・オコネルエマニュエル・ジャニーニ、オディール・ビュイソンらが提案した科学的根拠のないクリトリス関係の解剖用語を訂正し、はっきりさせておく』てね。タイトルに攻撃対象の個人名を書き、しかも「科学的根拠のない」とまで言いきるとは、なんとまあ直截な。

 
ヘレン・オコネル医師。

ピュッポ医師の攻撃の筆頭に上がっているヘレン・オコネル医師は、オーストラリアの泌尿器科医。実はジャニーニ医師よりかなり前から、クリトリスの再発見運動の旗手のような感じで目立っている女性です。サロンさんのコラム『鳥は菱形の庭に降りる・・』『菱形を貫く3本のチューブ』なんかで、われわれが知っているクリトリスというのは、実はクリトリス全体のごく一部で、クリトリス全体は、体なの中に埋まっている、結構大きな器官であることを勉強してきましたよね。ああいうことを、声を大きくして1990年代から言い続けているのが、このヘレン・オコネル医師なんです。

ヘレン・オコネル医師が提案する体の中にある部分も含めたクリトリスを復習しておきましょう(5)。

 

 文献(5)から。

われわれが「クリちゃん」とか言っている、オマンコの上に皮を被ってちょこっと出ているのが、いわゆる「クリトリスの頭」。クリトリス全体から見ると、氷山の一角なのです。男性のチンチンの亀頭に相当する部分で「陰核亀頭」とも呼ばれます。

クリトリスの頭」につながり「クリトリスの体」が続きます。さらに2つに分かれて「クリトリスの脚」=「陰核脚」となります。この「陰核脚」は、骨盤恥骨部分にぴったりはりついて、クリトリス骨盤に固定しています。

 

上の図は『菱形を貫く3本のチューブ』でも出てきた図ですが、「クリトリスの脚」が恥骨の内側にべったりとついているのが分かるかと思います。男性のチンポの勃起の主体でが「陰茎海綿体」なのですが、「クリトリスの脚」はこの「陰茎海綿体」と同等なんです。男性のチンポの根本も、上の図のように骨盤に脚を踏ん張って、勃起を維持するんです。同じように、「クリトリスの脚」も骨盤に脚を踏ん張って勃起し、「クリトリスの頭」を思いきり前に突き出すんです。

女性の体のすごいところは、この勃起組織、すなわち、コーフンすると血液がたまって大きくなったり、固くなったりする組織が、あちこちにやたらたくさんあることです。最初の図の青色の部分に「勃起組織(海綿体)」と書いていますね。これが勃起する部分。「クリトリスの脚」や「クリトリスの頭」に加えて、「クリトリスのバルブ」も青くなってますね。ここも勃起するのです。またこの図には書いていませんが、小陰唇(ビラビラ)や大陰唇もコーフンに伴い大きくなるとされています。そしても、もちろん乳首もコーフンすると勃起しますよね。

  

エッチなビデオを観てコーフンした時に膨れあがる体内のクリトリス。図の赤色は尿道で青色はヴァギナ。

で、この「クリトリスのバルブ」という下に垂れ下がっているみたいな2枚の部分なのですが、ヘレン・オコネル医師はこれもクリトリスの一部と主張しています。もともとは「前庭球」とも呼ばれていた組織なんですけど、これをクリトリスのバルブ」と呼ぶのだと主張しています。クリトリスのバルブ」も勃起組織(海綿体)」であることは間違いなく、男性のペニスの中にある「尿道海綿体」に相当する組織とも考えられているようです。「クリトリスのバルブは、上の図から分かるように、尿道、そしてを跨ぐ様に、あるいは取り囲む様に存在しています。位置的には、の入り口付近、つまりまさに、 陰核尿道膣複合体』の部分なのです。

もう、お分かりですよね。 ヘレン・オコネル医師が考える「広義のクリトリス」とジャニーニ医師の提唱する 陰核尿道膣複合体』は、かなり近いものです。2人とも、女性のオルガズムが、陰核亀頭」からだけではなく、「」を含めた、もっと広い領域からも得られることを説明しようとしているのです。

 

そこで、女性のオルガズム。これが難問です。

一般の人にとっても、性科学者にとっても、 女性のオルガズムはムツカシイのです。

クリションマンの故郷』でも紹介しましたように、ジャニーニ医師らは、最初に 女性のオルガズム

CAO=CLITORALLY ACTIVATED ORGASM=「クリ逝き

VAO=VAGINALLY ACTIVATED ORGASM=「中逝き」 

の2つに分けていましたね。

これは、何も女性のオルガズムが2種類しかないとは言っているわけではありません。

「最低でも2種類はあると考えてもよいのではないか(でも、中逝き」は存在しないという主張もあるが)」と控えめな表現をしています。

そう、中逝き」なんて存在しないと主張している人達もいるんですよ。そして多くの場合、「政治的理由」で否定されるのです(6)。

政治的理由?

そう、 「政治的理由」なんですって。

簡単にいうとフェミニストが中逝き」を否定する傾向があるのです。

「フェミニスト」というと、日本では「女性を大切にする素敵な男性」って意味で使われることが多いですが、これは日本だけの独特の用法で、本来はというか、正しくは、女性の権利拡張を実現しようとする思想をもった運動家を意味します。サロンさんは、フェミニストやフェミニズムのことを語るだけの知識をもちあわせていませんので、簡単にさらっと説明しておきます。

フェミニズム運動は歴史も長く、いくつもの運動のピークがあると思います。最近では、1970年代ぐらいに米国を中心におこったフェミニズムが大きなものだったのではないでしょうか。

フェミニズム運動は多岐にわたるもので、性に関しての運動をしているのは、その中のごく一部の人だと思います。

上に出てきた ヘレン・オコネル医師。サロンさんはこの方がフェミニストなのかどうかは知りませんが、この人の論文(7)のイントロダクションなどを読むと、しきりと「女性生殖器の解剖学知見は、20世紀に入って意識的に隠蔽されて消し去られてきた」「1999年の解剖の教科書の1つではチンポの記述が何ページもあるのに、クリはゼロ。」なんて感じの記述がでてきますので、フェミニズムに少なからず近い人なのだと想像します。

その一部のフェミニストの人達にとって、中逝き」がよろしくないということなのです( ヘレン・オコネル医師はそうは言っていないし、考えていないと思います)

なんでよろしくなか?それは、男性のチンポでズボズボ突かれて得るようなオルガズムは、男性が作った一方的な価値観だというわけです。

なので、チンポがなくてもOKな、クリ逝き」こそが本当の女性の悦びで、これを究めなければならい、といった感じの主張をしています。

1970年代の有名な米国フェミニストのアンネ・コートの『膣逝きの神話』(1970)を覗いて見ましょう。

「『不感症』は男性が膣逝きできない女性に対して勝手に押しつけた定義である。膣は何もチンポで逝くためにあるのでなく、そもそも感覚も鈍い。女性の最も感じるところはクリであって、男のチンポに相当するものだ」「女性のカラダはいろいろ感じる部分はあるが、唯一、その刺激で女性が逝けるのはクリトリスだけなのである」「全てのイクはクリトリスに由来しており、不感症と男に判断されている女性は、単に(男性の)クリへの刺激が不十分なだけだ」

といった調子です。

この手の過激なクリ信奉フェミニストは、「男性は包茎手術して感度を高めているので、女性も陰核包皮を切り取ってもっと感じよう」「妊娠なんて、何もチンポ突っ込んでズコズコしなくてもいいんだ。オマンコの外に射精してくれれば、精子が勝手に入って、妊娠することもできるんだ」とエスカレートしていくケースもあります。 「クリトリス教」みたいな感じですね。

70年代の「クリトリスの再評価」といったこの流れは、90年代のヘレン・オコネル医師の「広義のクリトリス」へとつながっていくわけです。つまり、「やっぱり、クリトリスってすごいんだ。小さな豆みたいなものかと思っていたら、体の中に広がる、もっと大きくて複雑なものなんだ」という訳です。「もっともっとクリで楽しもう!」って感じです。

  

 21世紀の「クリトリス主義」の流れの1つとも言える「クリトラシー」運動。

クリトリスが素晴らしいもので、もっともっとクリトリスを知り、クリトリスを楽しもう、という考えにはサロンさんも、もちろん大賛成です。でも、あんまりクリにばかり注意が向いて、クリトリス以外のことを忘れてしまうとまずいです。欧米には、フェミニズム運動のクリトリス再発見運動といった背景があるので、われわれから見ると、欧米の性科学そのものが、「クリ至上主義」から抜け切れていないような感じがします。

今回の陰核尿道膣複合体』=『クリトウレスロヴァギナル複合体』提案のお話しも、結局「Gスポット快感も、結局クリが感じてんのよ。オマンコの入り口付近は、クリの支配下にあるんだわ」って言っているような感じもします。

そうなのかもしれません。オマンコの入り口付近の刺激は、なんやかやでクリに伝わって、そこの感覚神経がシグナルを送っているのかもしれません。でも、いわゆる外に出たクリを触ってイク感じと、Gスポット刺激でイク感じって、全然違いますよね!(って、サロンさんは分かんないんですけどね)。これは、どう説明するの?外に出たクリを触ってイク時と、Gスポット刺激でイク感で陰核尿道膣複合体』の動き方が違うので(8)、そういうので説明しようとしているのでしょうか。

さらに、今回のジャニーニ医師らの提案記事(1)では、あたかも中逝き」=「Gスポット刺激逝き」と誘導するような感じで論が進んでいます。これまずいんじゃない?中逝き」=「Gスポット刺激逝き」なんですか?中逝き」の1つにGスポット刺激逝き」があるかもしれませんが、他にもあるでしょう。

陰核尿道膣複合体』は、「オマンコの入り口付近の上側」です。「オマンコの奥」はどうなの?「オマンコの奥」には、サロンさんを含め、多くの実践者が重要視している『ヴァニラスポット』があります。 みんな勝手に名前をつけているのですが(『A, T, G, C・・といろいろあります』参照)、『Aスポット』『AFEゾーン』『PFスポット』『ポルチオスポット』などがオマンコの奥にある性感ポイントです。『ポルチオ性感』とも関連の深い部分ですね。もちろん、「Gスポット」と同様、解剖学的、組織学的に独立な構成単位はありませんので、医学的には考慮に値しない存在で、実際、科学論文に出てくることもほとんどありません。

この「オマンコの奥」の性感ポイントから得られるオルガズムこそが中逝き」の真髄でないのですかね?どうもジャニーニ医師らは強引にクリトリスにつなげようとする、「クリ至上主義」のような気がします。「クリションマンの故郷」でも紹介したように、せっかくオマンコの「ペースメーカー」細胞という面白い論文を引用しているのに、この細胞が『オマンコの上側の奥』にあるので、陰核尿道膣複合体と話が合わないと、あっさり片付けてしまっています。

さらにいうなら、ポルチオ性感』の開発の進んだ女性は、別にオマンコ触らなくても、下腹部を外から刺激するだけでも、オルガズムに達しますよね。というか乳首マッサージスパンキング美容術ボンデージ美容術だけで逝っちゃう女性もいるのです。なので、クリトリスの関わらないオルガズムがたくさんあるのは、われわれ庶民には明らかな事実。

Gスポット問題だけでも、何年もケンケンゴウゴウの議論を続けているエライ先生達ですので、『縄逝き』なんかが論文で議論されるようになるのは、あと20年ぐらい先のことでしょうかね。

 

オリジナル文献

(1)     Jannini, E.A., Buisson O., & Rubio-Casillas, A. Beyond the G-spot: clitourethrovaginal complex anatomy in female orgasm. Nat Rev Urol, 11, 531-8 (2014).

(2)     Buisson, O., Foldes, P., Jannini, E. & Mimoun, S. Coitus as revealed by ultrasound in one volunteer couple. J Sex Med 7, 2750-4 (2010). 

(3)     Gravina, G.L., Brandetti, F., Martini, P., Carosa, E., Di Stasi, S.M., Morano, S., Lenzi, A. & Jannini, E.A. Measurement of the thickness of the urethrovaginal space in women with or without vaginal orgasm. J Sex Med 5, 610-8 (2008).

(4)     Puppo, V. Anatomy of the Clitoris: Revision and Clarifications about the Anatomical Terms for the Clitoris Proposed (without Scientific Bases) by Helen O'Connell, Emmanuele Jannini, and Odile Buisson. ISRN Obstet Gynecol 2011, 261464 (2011).

(5)     O'Connell, H.E., Eizenberg, N., Rahman, M. & Cleeve, J. The anatomy of the distal vagina: towards unity. J Sex Med 5, 1883-91 (2008).

(6)     Jannini, E.A., Whipple, B., Kingsberg, S.A., Buisson, O., Foldes, P. & Vardi, Y. Who's afraid of the G-spot? J Sex Med 7, 25-34 (2010).

(7)    O'Connell, H.E., Sanjeevan, K.V. & Hutson, J.M. Anatomy of the clitoris. ''J Urol'' '''174,''' 1189-95 (2005). 

(8)     Buisson, O. & Jannini, E.A. Pilot echographic study of the differences in clitoral involvement following clitoral or vaginal sexual stimulation. J Sex Med 10,2734-40 (2013). 

 

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『ジスイズ・オルガズム美容術』