いつの時代でも、「魔法の杖」は、貴女に美しさと健康をもたらしてくれるのです。
前回の『女性用性感治療院』の続きです。
『女性用性感治療院』の復習。
「時代の病気」なのか、あるいはたまたま当時の知の枠組みの中で創りされたにすぎない病名なのか分かりませんが、「ヒステリー」でくくられるいろいろな症状(痙攣、不眠、不安・・・)が、女性を苦しめていたのが18世紀、19世紀までのヨーロッパです。
性的に満足な生活を過ごしていないのが原因と考えられていたのか、その治療法として、「マンコの按摩」すなわち「手マン」が、普通のお医者さんでおこなわれてた時期があったのです(ヨーロッパですけどね)。
「ヒステリー」に罹った女性の体には「悪い体液」がたまっているとかで、「手マン」でお医者さんが一生懸命、「悪い体液」を絞り出してくれるんです。ようするに、オマンコから本気汁出させるわけですね。すると、「よくなる」んです。
治療効果は良好なのですが、お医者さんにとってはなかなかの重労働。
なんとか楽に「手マン」ができないかと、「手」に変わる医療器具の開発が進みます。
当時は、蒸気機関から電気の時代に移り変わる近代化の最盛期。
まずは、蒸気機関式の「自動手マン器」というか、「自動按摩器」が作られたようで、これがなかなか好評。
何せ、時間をかけて手でクチョクチョしなくても、あっという間にご婦人達は逝ってくれる。
いろいろ改良、開発され、中には、こんな強烈なものもできたそうで・・・
これって、ほとんどベイビー・エンターテイメントの世界ですね。
蒸気式「ファッキングマシーン」です。恐ろしい(笑)。
蒸気駆動式は当然「電気式」にバトンタッチ。
電動振動式の按摩器が最初に病院で使われたのは、1878年(日本では明治11年です)だそうで、パリの病院だったそうです。もちろん、ヒステリーの治療のためです。
なんなって、小さいし、安定しているし、モダンです。
最初に電動式バイブを作ったのは、英国の医師らしいですが、最初から蓄電器で動く携帯式だったらしいですよ。
ということで、医療用の電気式バイブレーターがどんどん作られ、広まっていきます。
電気式器具のよいところは、お手軽な大きさ、手頃な値段のものが簡単に作れること。
となると、これまで、「高級医療器具」としてエライお医者さんだけが使っていた電動手マン器具が、家庭用として手に入ることになるのです。
ほぼ同じ機能なものが、とても手頃な値段で、一般人でも手に入れることができるのです。1899年ぐらいから1920年ぐらいの頃で、日本では明治の終わりから大正の初めの頃ですね。
わざわざ病院にいかなくても、お家で気楽にヒステリー治療ができるわけです。
もちろん、家庭用ヴァイヴは治療用ではなく、「美容」と「健康」用で売られる訳ですけど。
家庭用の電化製品の第1号は「ミシン」だったそうですが、その後に続いたのが「扇風機」「湯沸かし器」「トースター」で、続いて「ヴァイヴ」だったんですって。「アイロン」や「掃除機」より「ヴァイヴ」の方が早かったみたいですよ。
ということで、20世紀の初頭は、家庭用電動バイブレーターの大ブーム。一家に一台、電動ヴァイヴをどうぞ、って感じ。
当時の雑誌広告がたくさん残っており、いろいろな会社が作った電動式バイブの実物も残っています。この頃のバイブを専門に扱う博物館もサンフランシスコにあるんですよね。
で、みなさん、何に使って使っていたかって?
「美容」と「健康」のためですよね。
SM美容と同じです。
体のあちこち、気持ち良いところを振動させて、スッキリ、ビューティーになるわけです。
「やさしく、なだめるように、貴女を元気づけ、すっきりと回復させます。
女性に必要なことは、女性が一番よくわかる。
そんな女性が生み出したのが、この商品。
自然界のあらゆるものは、いのちを宿し、
脈打ちながら振動しているのです」
「化粧室や寝室で、
誰の助けも借りずに、
誰にも知られず、
思う存分にお使い頂けます。
お使いになったすべての御婦人に、
いつまでも続く若さの真髄が授けられるのです」
って感じで広告されていたそうですよ。
Salon de SMのHPみたいに怪しいですね(笑)。
今でも、周期的に「美容」と「健康」の携帯ヴァイヴのブームが来ますよね。
キティーちゃんヴァイヴとか、普通のお店で売っていたりします。
もちろん「美容」と「健康」のために使うためにみなさん買うのでしょうが、サロンさんのお友達はキティーちゃんヴァイヴをオナニーのためだけに使ってましたよ。
いけませんね。
さて、20世紀初頭の電動式按摩器。電気製品の進化と共に、いろいろな工夫が発明され、どんどん高性能になっていきます。
当時の特許の申請書なんかも残っているんですよね。
電池とかが発明されると、当然コードなしの、ハンディーバイブが登場します。
でも、欧米でのこの「一家に一台」のヴァイヴ・ブーム、1920年ぐらいから、急に冷めてしまったそうです。
エロ映画とかで、女性が電動按摩器でオナニーするシーンとかが出てき、「なんだ実はオナニー器具なんだ(オナニーに使ってのは私だけでないんだ)」って感じになってくると、なかなか宣伝する方も、購入する方も、恥ずかしくなってきたのでしょうかね。
さて、今は、電動按摩器と言えば、電マですよね。
このHPとか読んでいる方とか、電マと聞くと、肩こりよりは、オナニーをまず連想するのでは。
ビックカメラの電マコーナーとかに行くと、胸が高鳴るでしょう。
「美容」と「健康」と「エロ」は大昔から、切っても切れない関係なので、安心して好きなように使ってください(ただし、SM美容術入門3-ダイナミックレンジを参考にして、うまく使ってね)。
アメリカでは「電マ」のことを「HITACHI Wand(ヒタチ・ワンド)」って言うんです。
「Wand」って「魔法の杖」のこと。
「日立製魔法の杖」で、使用目的は、もちろん「美容」と「健康」。
これが、まあ大流行なんだそうですわ。
いや、ほんと「振動子」は19世紀から続く幸せをよぶ魔法の杖ですね。
サンフランシスコに実在する「アンティーク・ヴァイブレーター博物館」。
これはプラハにある「セックス・マシン博物館」。人類、皆スケベあるネ。
(参考)
レイチェル・P・メインズ著『ヴァイブレーターの文化史一セクシュアリティ・西洋医学・理学療法』(論創社,2010)