昔は、わざわざ怪しげな女性用性感マッサージなんかいかなくても、お医者さんが手マンで逝かせてくれたんですって。

 

 

 

サロンさんの子供の頃とか、「ヒステリー」っていう言葉がよく使われてました。

「ヒステリー起こすなよ」とか「あいつはヒステリーだからな」とかいった感じ。

今でも使う表現なんでしょうが、ようするに変性意識状態になって、「キーキー」怒り出し抑制がきかない状態。

われわれが一般に使う「ヒステリー」は実は俗語で、精神医学用語では「Hysteria(ヒステリア)」という言葉として、俗語のヒステリーよりは、より広い神経症を表す言葉として存在していました。

「存在していました」と過去形で書いたのは、1990年代の初めから、医学用語としての「Hysteria(ヒステリア)」は消滅したそうで、「解離性障害」と「身体表現性障害」という2つの言葉に別れたそうです。

俗にいう「ヒステリー状態」と、医学的な「ヒステリー状態」がどれくらい違うのか(俗にいう「ヒステリー状態」は、医学的な「ヒステリー状態」の一部として含まれるんでしょうが)、サロンさんにはわかりません。

ただ、例えば20世紀初頭のフロイトの精神分析研究とか、ヒステリーの治療の過程で生まれた成果ですし、もう少しさかのぼって、催眠術の始祖とも称される、18世紀生まれのドイツの医師、メスメルも、ヒステリーの治療法として、今で言う「催眠療法」を生み出しています。教科書的には、18世紀、19世紀のヨーロッパは、特に女性にとって性が抑圧された時代であったために、それがヒステリー症状として噴出して、当時の多くの女性を悩ませていた、ということになります。

ようするに、「性を楽しむとは、なんとふしだらな女」「結婚前は性交渉はありあえない」「貞淑こそ女性の鑑」といった男性が押しつけた価値観にがんじがらめになり、そのはけ口として、いろいろな身体的なトラブルが出ていた時代ということなんでしょう。

「ヒステリー」という言葉の語源には、「子宮(ギリシャ語でhystera)」がからんでおり、紀元前のギリシャ文明時代からつい最近まで、「子宮が体内で暴れることで生じる病気」と、女性特有の病気と考えられていました。ギリシャ時代はいいとして、18世紀、19世紀頃までそう考えられていた、というのはなかなかすごいですね。

19世紀の女性を悩ましていた「ヒステリー」がどのような症状なのか、われわれには想像つかないのですが、ただ、かなり広汎な症状を「ヒステリー」として、それぞれの医者が捉えていたようで、「眠れない」「息苦しい」なども「ヒステリー」として扱われたりしていたようです。6世紀の医学書では、「ヒステリー」の症状が「子宮の収縮、全身の筋肉の痙攣、膣からの体液の放出」ってあるそうなんですが、これって、ようするに「逝ってる」状態のことなんじゃないのかな。

で、その原因は「子宮が体内で暴れる」わけなんですが、より踏み込んで、「充分な性的交渉が欠如している」や「性的欲求の充足が不足している」といったことに原因をおくことが多かったそうです。ようするに、欲求不満ってことなんですかね。

治療法としては「結婚」がベストということなんですが、結婚しない女性もいる訳ですし、結婚してても「ヒステリー」になる女性もいる訳で(というか、結婚してもご主人から、性的欲求の充足を受けるわけでは必ずしもないことは、みなさんご存じの通りで)、そうい時はどうするかというと「按摩」がよいということになるのです。

「按摩」といっても、肩や腕をマッサージするんではないですよ。オマンコを手でマッサージするの。「手マン」です。SM美容的にはヴァニラマッサージ美容術

 医者のための「マンコ按摩」のイラストマニュアル。

これをお医者さんが医院でやってくれていたわけです。

19世紀頃のお医者さんの治療マニュアルには、この「マンコ按摩」をすると「生殖器を手で触れることで、痛みと快感がほぼ同時に生じ、それに伴って夥しい量の濁った精液が放出される」と書いてあるそうで、この「濁った精液」ってのは、ようするに「本気汁」のことなんでしょうね。マンコから垂れてくるこの本気汁が悪いものだと考えられていたらしく、「ヒステリー患者の生殖器には大量の体液が欝滞しているので<性器の排出浄化>を施してこれを除去する必要がある」ということで、お医者さん達は、一生懸命「手マン」して、女性患者から本気汁」を搾り取っていたのです。

まあ、全ての医者が、「手マン治療」していたわけではないのでしょうが、たくさんの研究論文や、治療室の写真が残って居るぐらいですから、 かなりの数の医院で、この「手マン治療」がおこなわれていたのだと推測します。

「マンコ按摩」の専門の処置室。

で、この「マンコ按摩」、お医者さんにとっては、最初は楽しいのかもしれませんが、結構重労働ですし、患者さんはなぜかいっぱいくるし、仲間の医者からは変な目で見られるし、ってことで、なんとかならないか・・・ということで、いろいろな「マンコ按摩医療器具」が発明されてきます。「必要は発明の母」なのです。 

例えば、下のイラストは、蒸気機関で動く、マンコ按摩装置つき、診察ベッド。

うつ伏せで寝て、オマンコを、膨らんでいるところに乗せると、ポンポンと叩いてくれるのかな? 

「マンコ按摩診療ベッド」

これに関連して、民間療法としては、「ヒステリー」を軽快するためには、「乗馬」「サイクリング」「足踏みミシン」がよいのだと言われていたり、逆に、「乗馬」「サイクリング」「足踏みミシン」は、女性が淫乱になるので、気をつけるように、って感じのことも言われていました。

ラブホなんかに、ロデオマシーンなんか置いてますけど、こういうのはもう19世紀や20世紀初頭からあるみたいですよ。

「ロデオマシン」でマンコすっきり。

あとは、民間療法のようで、ちゃんとした医療のようでもある、「水療法」というのがあったようで、こちらでは、オマンコに水流をあてることで、ヒステリー治療する方法が広まっていたようです。欧米の温泉ってのは、こういう「マンコ水刺激療法」を広くやっていたそうですわ。ようするに、今でいう、「シャワーオナニー」ですね。

「水圧療法」でマンコすっきり。

これなんか、最新式(当時)の「マンコ水療法器具」のカタログ図で、気持ちよさそうですね〜。

「マンコピンポイント水圧刺激」

 

そうこうしている内に、「最新の電気科学の成果を取り入れた、究極のマンコ按摩器」ということで、振動子(バイブレーター)が発明されてくるわけです。

これで、お医者さんも、汗かきながら「手マン」しないでも、「グィーン、はい終わり」って感じで、労力なしで、しかも短時間で患者さんのアクメを誘導し、「ヒステリー」治療ができるようになったわけです。もちろん、最新式按摩機を備えた病院は大繁盛、大儲けだったと思います。

「初期の振動子治療器具」

「事実は小説よりエロなり」といいますか、なんだか想像もつかない時代だったのですね。

でも、ネット上で、Salon de SMのような怪しげな美容術を捜さなくても、「ちょっと、最近調子悪いから、今日は仕事帰りに、近くのお医者さん寄っていきます」ってことで、帰宅前に、イケメンドクターの電マでスッキリ、なんて世の中になって欲しいと思う女性も多いのではないかな。

 

ということで、今回は『SM美容術入門13-振動子美容術』の前ふりでした。

 

ここらへんのこと、より詳しく勉強したい人はレイチェル・P・メインズ著『ヴァイブレーターの文化史一セクシュアリティ・西洋医学・理学療法』(論創社,2010)をお読みください。かなりしっかりとした学術的な本です。

19世紀末のヒステリーに悩む女性とそれに取り組む医師を描いた『ヒステリア』。

 

「催眠療法」の開祖とも言えるメスメル(1734-1815)の伝記映画。15:00ぐらいからヒステリー症状を起こす女性が描かれている。

 

 

『ジスイズ・オルガズム美容術』