『メスマー美容術入門01-元祖怪しい人』でご紹介したように、天才メスマー先生は、「使えるもんなら何でも使っちゃおう」ってことで、当時ベンジャミン・フランクリンが発明して、モーツアルトなんかもつかっていた「グラスハーモニカ」という変わった楽器を、自分の催眠療法の時に、演奏していたんです。
この「グラスハーモニカ」という楽器、ワイングラスの縁をうまくこすると、妙なる音が出る、あれを利用した楽器。大きさの異なるガラスの器を横につなげて並べ、自動的にグルグル回し、ガラスの縁に指をあてて、神秘的な音を出す仕組み。
フヮン・フヮン・フヮンという音を聴いていると、なんだか不思議な気持ちになって、トランス状態に入ってしまうことです。
何やら怪しくて、不道徳な事をやっているメスマーが使っているから、という理由からかどうかは知りませんが、この「グラスハーモニカ」、とうとうドイツでは「頭が変になる」ということで、演奏禁止令がほんとに出たとかいう話もあります。
音には、確かに心を不思議な状態にする力があるようで、お経を詠む際には、ち〜んとか、ゴーン、って磬子(きんす)鳴らしたり、ポコポコと木魚で単純なリズムを刻んだり、いろいろやります。宗派によって、いろんな楽器を使います。トランス状態に入りやすくするためですね。
チベット仏教ではこの磬子の仲間の金属製のお椀みたいなのをかなり積極的に使うようで、その部分のみが切り出されて、瞑想法として世界中に広まっています。
特定の周波数と特定のこころの状態が関連しているとかで、○○ヘルツの音は愛を育むとか、△△ヘルツの音にはDNAの修復作用があるとか、そういうところまで先鋭化しているのもあります。
まあしかし、ちょっとトランス誘導の上手い人なら、同じ周波数の音で、楽しい気持ちにも、悲しい気持ちにも誘導できるでしょうし、同じ楽しい気持ちも、どんな周波数を使ってでも誘導できると思います。
でも、単調でかつやや揺らいでいる(微妙に変化している)音には、確かに、トランスを誘導する不思議な力はあるのでしょうね。
音程や音質のみならず、リズムも音の重要な要素。単純なリズムの繰り返しを微妙に変化させることで、トランス状態に誘導できます。
いわゆる近代西欧音楽でも、同じような技法が用いられます。単純な繰り返しですが、こころがいろいろな方向に誘導されていくのが分かると思います。ライヒはこの手の西欧近代音楽の作曲家ではピカイチです。
ちなみにこちらは、現代版のケチャ。
さて、 「これさえ聴かせれば彼女(彼)を一発でその気にさせる」なんて音(音楽)はあるんでしょうか?
そんなの、無いですよね。
「法悦の詩」ってクラッシックがあって、かつては「スケベすぎる」と演奏禁止になったこともあるらしいですが、これを聴かせても、相手がクラッシック好きなら、気分はよくなっても、「落とす」なんてのはとてもできないですよね。
かといって、「ハーレム・ノクターン」「ジュテーム」とかは、暗いダンス劇場とかで聴くと、心臓パコパコして、エッチな気分になるかもしれませんが、デートの時にこんなのかけても、「趣味ワル〜」と思われて、おしまいですよね。
まあ、楽曲だけを聴かせて、相手をエッチな気分にさせるのは無理です。
ただし、エッチな気分、トランス状態に誘導するために、道具の1つとして音や音楽は使うことができます。
では、SMプレイをする時に、どんな音楽をかければ良いのでしょうか?
これも簡単な答えはないです。
間違えなく言えるのは、あまり主張の強い音楽は、そちらに気を取られてしまうので、よくないということぐらい。
無意識に働きかける(つまり、あまり気にならない)で、単調な繰り返しの音がよいかもしれません。
Merzbow(メルツバウ)という日本人の音楽家は、1991年に「緊縛の為の音楽」ていうCDを出しているんです。
メルツバウさんは、ノイズミュージシャンとして世界的に有名ですが、かつては秋田昌美という名前で、濡木痴夢男なんかと活発にヘンタイ活動されていて、この「緊縛の為の音楽」も濡木氏のために創ったものだと思います。
緊縛パフィーマンスの舞台には使えるかもしれませんが、プライベートなセッションに使うには、いろいろ条件が揃っていないと、使いにくそうですね。
Lapalux(ラパラックス)というイギリスのミュージシャン、好きなんですけど、最近のアルバムに緊縛が使われててびっくり。
もともとエロチックな音楽を作る人なので、よい感じです。
ミュージックビデオには、たまに緊縛が使われますね。米国のThe Bullsというグループのミュージックビデオの緊縛は、日本の緊縛の歴史に関する本まで出した、米国人の緊縛マニア、マスター・ケーという人が担当しています。
ということで、やや話が分散してしまいましたが、結論としましては、彼女や彼をその気にさせてしまう「催淫音楽」というのは、「相手の趣味」、「その時の自分と相手の気持ち」などによって大きく変わってくるので、臨機応変に決めるしかない、ということだと思います。