「情愛」「羞恥」「責め」。3つの情感を縄で誘導していきます。

 

 

 

 

いつまでたっても、観念論ばかりで、ちっとも具体的な縛り方を教えてくれない

と思っているあなた。

正解です。いつまで待っても縛り方の解説なんてでてきません。

縛り方の詳細は教則本、教則DVD、縄教室などでみっちり勉強してください。『SM美容術入門17-縄をマスターするには』が参照となるでしょう。

ある程度縛れるようになってから、再び『SM美容術入門』を読み返していただくと、「結構役に立つこと書いてたんだ」とお気づきになるかもしれません。

 

さて、前回の『SM美容術入門22-縄で創る臨場空間』では、「縄」は「手段」で「ツール」にすぎないことを説明しました。

大切なのは、「縛り手と受け手が、縄を介してイメージの世界で遊ぶこと」でした。臨場感の強い仮想空間を頭の中に作り出して行くわけです。

このイメージの世界に誘導していくツールが『縄』です。

実のところ縄ではなくて、エネマやスパンキングでもよいですし、蝋燭やバイブでもOKなのですが、ここは縄に話を絞って解説していきましょう。

 

人間の感情はしばしば「喜怒哀楽」に分類されます。

縛られて、楽しくなったり、悲しくなったり、人それぞれに、いろんな気分になります。

そういったいろいろな感情を、縄を使って導き出していくのが「縄を介してイメージの世界で遊ぶこと」の基本です。

縛られて、「怒り」の気分になったり、「おかしくて笑っちゃう」っていう気分になることは、あまりないかと思います。

「喜」と「哀」が誘導されるメインの感情かもしれません。

 「喜びを導く縄」「哀しみを導く縄」でもよいのですが、ここでは、縄が導く感情を大きく3つに分けて考えていきましょう。

それは

  1. 『情愛』
  2. 『羞恥』
  3. 『責め』

です。

それぞれ説明していきましょう。

情愛

「愛されている」「優しく抱かれている」「濡れてしまう」「逝っちゃいそう」といった気持ち。

そういった気持ちを受け手に誘導するようなベクトルの方向です。

プロの緊縛師がよく「俺の縄は○○縄だ」と説明されますが、その中でも「エロ縄」や「愛撫縄」と称される縄で多用されるベクトルかもしれません。

羞恥

 

これは分かりやすいですね。

ずばり「恥ずかしい」という気持ちです。

そういった気持ちを誘導するベクトルの方向です。

あくまで「方向」です。これが大切。

両脚を大きく開いた縛りは、確かに恥ずかしい縛りですが、

例え両脚をピッタリくっつけて縛っていても、

「これから脚を開いて、恥ずかしいところを見られちゃうよ」

という気持ちの「方向」を誘導できるなら、それは「羞恥」ベクトルの縄の使い方です。

実際、股を開いた後より、「これから開くぞ」という開く前の方が、イメージ空間がいくらでも膨らむので、

ずっと恥ずかしいんです。

責め

「支配されている」「痛い」「辛い」「きつい」といった感情。

受け手の感じる心の動きなので、「責め」ではなく「被虐」の方が正確な表現かもしれませんが、「責め」にしておきましょう。

これも同じく、ベクトルの方向、つまり動きを重視しましょう。

実際にきつく縛ったり、苦しい体勢で縛ったりするのももちろんありですが、

それほどきつくしばらなくても、いくらでも責めの感情を誘導することはできます。

逆にいくら力をいれてギューギューしばっても、受け手は不快なだけで、ちっとも被虐感を感じないこともあります。

 

心の動きを、縄でいかにコントロールするか。

これが緊縛で最も大切なことです。

「俺は、そんなダマしみたいなセコいことはしません。責めるときは、逆さ吊りにできるし、辱めるときは達磨縛りも使えるんだ」

と思っている人は、人間の感覚をまだよく理解していない人。

確かに、縄が触れる皮膚感覚や、縄により体にかかる力を感じるのは神経細胞への物理的刺激です。

でも、「情愛」「羞恥」「責め」といった高次の感情として出てくるときには、あたまの中でいろいろな処理をされているのです。

そして、同じ物理的刺激でも、それがどういった方向、どういった強さの感情を引き起こすかは、前後の文脈などで「いくらでも」しかも「自由自在に」変えることができます。

縄を使って、 「情愛」「羞恥」「責め」の感情を引き出し、それをうまくつなげながら、深くて広い臨場空間を、縛り手の受け手の間で作っていくのが、「縄遊び」の醍醐味です。

全体として「責め縄」「羞恥縄」「情愛縄」と呼ばれるようなスタイルがまとまることはあるでしょうが、例えば「責め縄」のセッションをじっくり見ていると分かるように、プロの緊縛師は、受け手の感情をいろいろな方向に誘導しながら、セッションを構成していきます。最初から最後まで、「責め」の方向で縛っていては、単調でつまらなく、深みのない縄になってしまいます。

「責め」てから「さらに強く責め」るのと、「責め」てから「情愛」で落ちつかせ、ふたたび「責め」るのでは、どちらが楽しそうかは、一目瞭然ですよね。

 

次回は、具体的にどうやって、縄で感情を誘導する方法を身につけていくかについて、説明していきます。

【Take-home message-42】「情愛」「羞恥」「責め」の情感の方向を縄で導き、組み合わせながら臨場空間を創っていきます。

 

時々出てくる伝説の緊縛師、明智伝鬼。肖像権の関係かyoutubeに出てもすぐに削除されてしまうようですが、この「I.K.U.」(アップリンク, 2000)のトレーラーの1分前後に出演者でもある明智伝鬼が少し出てきます。

「愛撫縄」「情愛縄」の使い手と称される雪村春樹。心の誘導を重視した、奥の深い「縄遊び」を見せてくれます。濡木痴夢男、明智伝鬼と並び称される神レベルの緊縛師です。

 

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連載『SM美容術入門』