ナマがいいけれども

生でなくても暖かいよ

 

 

ピアノは生が一番。それもグランドピアノの音が最高ではありますが、普通の人は自宅にグランドピアノなんておけませんよね。

アップライトピアノなら置けるかもしれませんが、でも結局、騒音で近所迷惑。なので、今の時代は、電子ピアノ。

でも、生ピアノの音に比べると物足りません。

所詮、電子キーボードは生ピアノにかなわないと思ってしまいますが、電子というか電気式キーボードもなかなかイケてるのも多いのです。

 

例えば、ハモンドオルガン。

ピアノは弦をハンマーで叩いて音を出すのですが、パイプオルガンは同じ鍵盤楽器でも、空気を使って音を鳴らします。

このパイプオルガンの音をまねて、教会で使ってくれないかなと、開発されたのがハモンドオルガン。

電気式といっても、真空管やトランジスターを発振させて音を作るのではなく、ギアをモーターで回転させ、磁力をどうのこうので音に変えてしまうという、時計で使われていた技術を利用した物で、米国のハモンドさんが、戦後まもなく発明します。

これがハモンドオルガンの内部構造なのですが、凄いですね。ほんと、時計のよう。

この精緻な構造物から生まれて来るサウンドが、なんともいえず暖かく、多くの音楽家の心を掴みます。 

特に、レスリーという人が発明した、ハモンドオルガン専用みたいなスピーカーがまた凄くて、「B-3タイプハモンドオルガン+レスリースピーカー」の組み合わせが、伝説の名器となって、今では凄い値段で取り引きされています。

上の動画は、ジャズオルガン奏者として有名な、ジミー・スミス。もちろん使っているのはハモンドオルガン。

ハモンドオルガンは、ロック分野でもよく使われていました。キースエマーソンのナイフ刺しパフォーマンスとかが有名ですが、うまいこと鍵盤のすき間に差し込みますね!

 

続いて、フェンダー・ローズ。

打弦式の本家ピアノの電気版は、どうなのかといいますと、これも米国で第2次世界大戦中に、ハロルド・ローズという人が、戦地の兵士に音楽を届けたいと、飛行機の部品を使って作ったそうです。

弦をハンマーで叩くのではなく、金属板を叩きます。金属板は弦のように長くありませんので、全体をコンパクトにできます。

金属板を叩いても大きな音が出ないので、そこは電気式に増幅する、という訳です。

これがローズピアノの内部構造ですが、やはりかなり精緻な構造。美しいです。

金属板を叩くので、どちらかというと鍵盤式ヴィヴラフォンのような感じですね。

戦後は、お子様の音楽教育に、ということで一般家庭への普及を狙ったようですが、「ピアノの音とはとても思えない」と流行らなかったようです。

 

ところが、ピアノの音とは違うのですが、独特の暖かくて、味のある音色をもつことから、「フェンダー・ローズ」として、多くの音楽家が好んで使い出します。

チック・コリア、ハービー・ハンコック、キース・ジャレットなどが名演を残しています。

 

さて、ここまではどちらかというと「機械式電気楽器」。

1960年代に入ると、音響機器の進化と共に、新しい楽器が登場します。

 

まずは「メロトロン」。

 

 

 

これ、どういう構造になっているかというと、これまた凄いのです。

ご覧のように、1つの鍵盤に対して、1つの磁気テープが割り振られています。

「磁気テープっって、なんじゃいな」

という方が多いと思いますが、今の「音楽ネット配信」の前には「CD」の時代があって、その前には「カセット(磁気)テープ」の時代があり、その前に「オープンリール(磁気)テープ」の時代があり、このテープの時代と最後が重なって、エジソンからの「レコード」の時代があったのです。

で、1960年代に、この「磁気テープ」を利用して作られたのがメロトロン。

1本の磁気テープに、ある音階の楽器の音色が録音されており、鍵盤を押さえると、バネか何かで、テープが動いて、音が再生されるという構造。

ハイテクなのかローテクなのか分かりませんが、構造としてはやあり複雑。「機械式」と「電子式」のハイブリッドみたいな感じですかね。

とにかく、暖かく、分厚い音色を出してくれます。

ビートルズなども使っていたようですが、なんといってもメロトロンといえば、キングクリムゾン。

初期のキングクリムゾンの作品には、なくてはならない音色となっています。

 

お次は、いよいよシンセサイザーの登場。まずはアナログシンセ。

70年代ともなると、真空管からトランジスターやLSIの時代。値段もどんどん下がり、

ムーグ博士が開発した「ムーグ式シンセサイザー」が1964年に登場します。

初期モデルはご上の写真のような、巨大な構造体。

 

 

 

出てくる音も、安っぽいピロピロサウンドではなく、厚みのある音が出ましたので、冨田勲のような高いレベルの作品製作ができる使い手が現れてきます。

上で登場したキース・エマーソンも、初期モデルからのムーグの使い手です。

 

電子機械の小型化は急ピッチで進みますので、シンセサイザーのどんどん小型化。上の写真はかなり小型化に成功したアープ2600シンセサイザー。

電子式だから、どれも同じ音だろうと思われるかもしれませんが、どっこい作り手により、強烈な個性が出せて「ムーグサウンド」「アープサウンド」、そして、それらの楽器を得意とする使い手も出てきます。

日本の「ローランド」や「コルグ」の製品が独自の音色で世界の音楽家に使われるようになります。

動画はアープの使い手として知られるジョー・ザビヌル。

 

そして、アナログシンセからデジタルシンセの時代に。

 

ピアノやエレクトーンで、クラッシックや一般過程では目立つ存在だったヤマハですが、シンセサイザーの世界では、ここまでぱっとしませんでした。

ところが1983年に「DX3」という歴史に残るシンセサイザーの名器を発表します。

それまでのシンセサイザーが「アナログシンセ」と言われるのに対し、DX7以降は「デジタルシンセ」の時代。

簡単には、コンピューターが音を出します。

「デジタルはアナログに比べて音の厚みがない!」

って、嫌われもしましたが、とにかく表現力が凄い。

デジタルの場合、タッチセンサーなどの取り込みが容易だったからだと思いますが、演奏者のニーズにあったデジタルシンセサイザーが、どんどん開発され、またたくまに世界を席巻してしまします。

その後は、サンプラーやシークエンサーなど、デジタル技術をふんだんに取り入れながら、現在に至るわけです。

今では、タブレットPCで、ハモンドオルガンやメロトンの音をデジタル再現!なんてできる時代になっていまが、実のところ、どれも本家の音色を再現すことはできていません。

ハモンドオルガンがパイプオルガンを真似できなかったように、フェンダー・ローズがピアノの音とは似ても似つかなかったように、マネっこしてもむだなんですよね。今までにない独自の新しい世界を新たに創り出すことが何よりも重要です。